ブログランキング

28

January February March April May June July August September October November December
2011(Mon)

「カササギたちの四季」 道尾秀介著

読感/国内小説

「カササギたちの四季」 道尾秀介著/

開店して2年。店員は2人。「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない―。

↑本の内容紹介から。

「―春―鵲の橋」
「―夏―蜩の川」
「―秋―南の絆」
「―冬―橘の寺」

――の、四編収録。

リサイクルショップの二人の従業員華沙々木さんと日暮さんと、中学生の少女南見菜美ちゃんの一年を書いた四編の短編連作です。
語り手は日暮さんで、日暮さんは何と言いましょうか、ぼけぼけホームズの活躍を影から支える有能ワトソンといったところ。
華沙々木さんを名探偵と誤認している(その辺りのエピソードは「南の絆」で書かれてます)菜美ちゃん落胆させないよう、謎めいたことがあれば誰も頼んでないのに首を突っ込む華沙々木さんの間違った推理を、いかにも本当らしく見せるよう人知れず奮闘する日暮さんの苦労にクスクスと笑いがこぼれます。
短編連作ということで、パターンを繰り返しているように見せかけて、またと思うところを変化を付けてきたりと。
構成も面白く、どのお話も優しさに包まれていて、とても温かかったです。
最近の道尾さんの作品からしたら、かなり明るいですが、テーマなどは道尾さんらしい。
明るいといっても、軽いばかりではなく、ときに苦い挫折も描かれていますが、それでもそこから次へと、どこか前向きさを感じさせてくれます。
ファンの人も、今までの作風にちょっと手を出しそびれていた人にもオススメです。
人が死なないミステリですので、安心してどうぞ!(笑)
ミステリ好きな人も華沙々木さんの謎解きと、日暮さんの謎解きの二つの推理を楽しめますので、是非!

カササギたちの四季カササギたちの四季
(2011/02/19)
道尾秀介

商品詳細を見る

Edit

Page up▲

26

January February March April May June July August September October November December
2011(Sat)

「忘れられた花園 上・下」 ケイト・モートン著

読感/翻訳小説

「忘れられた花園 (上)」 ケイト・モートン著/

1913年オーストラリアの港に着いたロンドンからの船。すべての乗客が去った後、小さなトランクとともにたったひとり取り残されていた少女。トランクの中には、お伽噺の本が一冊。名前すら語らぬ身元不明のこの少女をオーストラリア人夫婦が引き取り、ネルと名付けて育て上げる。そして21歳の誕生日に、彼女にその事実を告げた。ネルは、その日から過去の虜となった…。時は移り、2005年、オーストラリア、ブリスベンで年老いたネルを看取った孫娘、カサンドラは、ネルが自分にイギリス、コーンウォールにあるコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか?ネルとはいったい誰だったのか?茨の迷路の先に封印され忘れられた花園のあるコテージはカサンドラに何を語るのか?サンデー・タイムズ・ベストセラー第1位。Amazon.comベストブック。オーストラリアABIA年間最優秀小説賞受賞。

↑本の内容紹介から。

「忘れられた花園 (下)」 ケイト・モートン著/

2005年、オーストラリアのブリスベンで祖母ネルと暮らしていたカサンドラは、亡くなった祖母からイギリス、コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した。1975年になぜネルはそのコテージを買ったのか?ネルの書き残したノートと古いお伽噺集を手に、カサンドラはイギリスに渡った。今はホテルとなっているマウントラチェット家の豪壮な屋敷ブラックハースト荘、その敷地のはずれ、茨の迷路の先にあるコテージが彼女のものとなったのだった。カサンドラは、コテージの手入れを進めるうちに、蔓植物に埋もれるようにして閉ざされ、ひっそりと忘れられていた庭園を見出す。封印され忘れられた花園が彼女に告げる驚くべき真実とは?ネルとはいったい誰だったのか?そしてブラックハースト荘の秘密とは…?サンデー・タイムズ・ベストセラー第1位。 Amazon.comベストブック。オーストラリアABIA年間最優秀小説賞受賞。

↑本の内容紹介から。

1913年オーストラリアの港で一人きりでいたところを発見された少女。ネルと名付けられた少女を2005年、看取った孫娘カサンドラは、ネルの遺産としてイギリスに一軒のコテージが残されていたことを知る。
自分の過去を探していたネル。彼女はいったい何者だったのか、ネルの遺産であるお伽話集とイギリスのコテージに手掛かりを求めて、海を渡ります。
お話の始まりはオーストラリアですけれど、殆どはイギリスで語られています。
(↓にあるイライザの少女時代は1900年代頃なので、その辺りがお好きな方は手に取って良いかと)
現在、過去と断片的に語られる物語は、カサンドラやネルだけには留まらず、ネルを置き去りしたと思われるお話のおばさんこと、お伽話集の作者イライザ・メイクピースの生い立ちにまで遡り、寄せては返す波に洗われるように、少しずつ明らかになる事実のその先が気になって黙々と読んでしまいました。
上巻のイライザの少女時代のお話は、特に良かったな。
(母親を亡くし下町で育ったイライザと、後に伯父の元に引き取られ従妹のローズとの間に生まれた友情など)
下巻では、イライザやローズも成長して、互いに求めるものを得ようとして、それ故に広がっていく距離が切ないといいますか。
若干、先読みできる内容というか、予感のようなものがあったので、その実、この予感が当たらなければいいなとドキドキしつつも、ページを捲る手を止められませんでした
物語に色を添えるように挟まれたお伽話も、このお話にあっていてとても良かったです。
(ネタバレ反転→ただ、母子の血の絆にテーマが集束してしまったような。血の繋がりがなくてもネルを愛した養父母や子供を切実に望んだ彼女と手に入れた子供との時間をもう少し描いて欲しかったかな
どちらかというと、女性に贈るお話という気もしました。

忘れられた花園 上忘れられた花園 上
(2011/02/18)
ケイト・モートン

商品詳細を見る
忘れられた花園 下忘れられた花園 下
(2011/02/18)
ケイト・モートン

商品詳細を見る

Edit

Page up▲

20

January February March April May June July August September October November December
2011(Sun)

「サラの鍵」 タチアナ・ド・ロネ著

読感/翻訳小説


「サラの鍵」 タチアナ・ド・ロネ著/

パリで平穏に暮らす45歳のアメリカ人記者ジュリアは戦時中にこの街で起きたユダヤ人迫害事件を取材することに。しかしその事件が彼女の、そして家族の人生を深く、大きくゆさぶりはじめる…。

↑本の内容紹介から。

第二次世界大戦中フランス警察の手によって収容所に連行された少女サラと、その事実を知った現代の女性記者ジュリアの話が交互(前半)に語られます。
この本が語るのは、ユダヤ人迫害がナチスの意向があったものの、フランス警察が立案し実行した強制連行の事実です。
フランス自国の恥であることを長年フランスで暮らしてきたジュリア知らず、またフランス国民もまた知らない世代が増え続けていること。
↓の文章が、恐らくこの作家が書きたかったことなんだろうな、と思いました。

「わたし、自分が何も知らなかったことを謝りたいんです。ええ、四十五歳になりながら、何も知らなかったことを」
(「サラの鍵」P278より)


サラのパートでは、強制連行するために警察が現われた際、サラは四つの弟を隠し扉の向こうに隠します。
直ぐに戻って来るつもりで、そしてその方が弟は安全だと思って、かけた鍵。
自分たちの運命を知り、戻れないことでサラの心を押し潰さんばかりの後悔が、読んでいて辛かった。

「お父さんは教えてくれなかったじゃない。何も説明してくれなかったじゃない。こんなことになるかもしれないなんて、一度も話してくれなかったわ。ただの一度も! いったい、どうして? あたしはまだ子供だから、わからないだろうと思ったのね? 子供のあたしを守ろうと思ったのね? そうなのね?」
(「サラの鍵」P87より)


伏せられた真実を知ること、それによって何かが変わってしまうことに対する怖さを覚えるも、知らないふりを続けることが良いこととは思えないと感じる部分もあって、何だか色々と考えさせられました。
後半、ジュリア(というか、現代)の物語に収束してしまったのが、個人的に残念だったかな。
サラのことをもっと知りたいと感じていたので。
内容は重たかったけれど、読めて良かったです。

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)
(2010/05)
タチアナ・ド ロネ

商品詳細を見る

Edit

Page up▲

16

January February March April May June July August September October November December
2011(Wed)

「人形遣いの影盗み」 三木笙子著

読感/国内小説


「人形遣いの影盗み」 三木笙子著/

とある代議士夫人の影が盗まれた。にわかには信じ難い事件の調査を頼まれた高広と礼は……。雑誌記者と美貌の人気絵師の2人の活躍を描く、好評《帝都探偵絵図》シリーズ第3弾。

↑本の内容紹介から。

ホームズの物語が大好きな美貌の絵師・有村礼(偉そうなワトソン)とその親友で謎解きの才を見込まれている里見高広(腰の低いホームズ)のコンビが活躍する、「人魚は空に還る」「世界記憶コンクール」に続く、明治時代を舞台にした短編連作ミステリの第三弾です。

第一話「びいどろの池」
第二話「恐怖の下宿屋」
第三話「永遠の休暇」
第四話「妙なる調べ奏でよ」
第五話「人形使いの影盗み」

 ――の五話収録。

第一話は芸者・花竜がメイン視点となっています。二人は外側をウロチョロとしていて、怪しまれていたり。
第二話は高広の下宿先が舞台の掌編。
第四話は礼が何だか危ないことに巻き込まれているようで、普段は探偵役なんて柄じゃないと思っている高広が率先して、首を突っ込んでいったりと。
怪盗好きな私としてはロータスが出てきた表題作が一番好きです。第三話も好きだな。というか、全部好きだ!
しかし、礼は本当にホームズのことになると、子供のように目をキラキラさせるな。
普段はクールで、近寄りがたい感じなのに。
そんな礼のギャップと、柄じゃないと探偵役から逃れようとしている高広が、何だかんだとなし崩しに謎解きをやっているのが面白い。
後、里見夫婦(高広さんの養父母)がチラリと出てきまして、二人揃っているわけでもないのに仲の良さが伺えて、「うふふ」と笑みがこぼれました。
今作も全体的に清らかで(勿論、悪い人も出てくるけど、後味は悪くない)、仄かに温かく、心地よい読後感でした。
第一作はデビュー作ということで、他の作家さんと似たような部分が目についてしまいましたが、第二作、第三作と読んで、もうこの繊細で温かな作風は完全に作家様の持ち味として定着したなという印象。
過去シリーズがお好きだった方は、今作も読んで間違いなしです。
オススメ!

人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)
(2011/02/11)
三木 笙子

商品詳細を見る
人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア)人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア)
(2008/08)
三木 笙子

商品詳細を見る
世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア)世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア)
(2009/12/11)
三木 笙子

商品詳細を見る

Edit

Page up▲

05

January February March April May June July August September October November December
2011(Sat)

「死をもちて赦されん」 ピーター・トレメイン著

読感/翻訳小説


「死をもちて赦されん」 ピーター・トレメイン著/

ウィトビアでの歴史的な教会会議を前に、アイオナ派の有力な修道院長が殺害された。調査にあたるのはアイオナ派の若き美貌の修道女“キルデアのフィデルマ”。対立するローマ派から選ばれたサクソン人の修道士とともに、事件を調べ始める。フィデルマの名を世に知らしめることになる大事件と、後に良き相棒となるエイダルフとの出会いを描いた、ファン待望の長編第一作遂に登場。

↑本の内容紹介から。

日本での刊行が変則的で、長編四作目にしてシリーズ一作目が登場!
というのも、アイルランドのドーリィー(法廷弁護士)である主人公・フィデルマが活躍する今作の舞台は、アイルランドじゃない!
アイルランド文化を堪能できるところまで、読者が待ってくれるのか?という編集さんたちの考えで、刊行の順番が入れ替えられたようです。
うん、シリーズを読破して、その判断は正しかったかなと思いました。
アイルランドの文化、ブレホン法などを既刊で把握していたから、フィデルマがこの作品内で犯罪者に対する処罰に激怒するところなど――あの整った法律の下で暮らしていたなら、こちらの法律は……。
そんな二国間の文化の違いなどが、変則刊行である意味で楽しめたような。

と、話を元に戻して。

ローマ派とアイオナ派という、二つの宗派。
ノーザンブリア王国はどちらの宗派を主とするかという、教会会議を前に修道院長が殺される。
その目的は教会会議を操ろうという陰謀では?――と、捜査を任されることになったフィデルマですが、公平さをきすためにローマ派からも一人。
そうして、選ばれたのが今後フィデルマの良き相棒となるエイダルフ修道士。
ノーザンブリア王国の王様(アイオナ派)が何気に話のわかる人でしたが、その息子(ローマ派)がまあ、フィデルマとビチバチと火花を散らすバトルを繰り広げたりとか。
それを額に汗かき、ハラハラしまくるエイダルフ修道士とか。
フィデルマとエイダルフ修道士の出会いと共に、当時のローマ派とアイオナ派との宗教的対立など、大変興味深く読めました。
二つの宗派の勢力に二分する王国内。内乱の危機に発展しそうな流れで緊迫感が生まれ、事件解決をせかされる状況にハラハラドキドキと、犯人探しだけに留まらないお話の盛り上げ方の巧さは第一作から健在でした。
面白かったです。
次はいつ頃出ますかね(←気が早い)

死をもちて赦されん (創元推理文庫)死をもちて赦されん (創元推理文庫)
(2011/01/26)
ピーター・トレメイン

商品詳細を見る

Edit

Page up▲

Designed by mi104c.
Copyright © 2011 この瞳に映るもの, all rights reserved.
01 | 2011/02 | 03

sun

mon

tue

wed

thu

fri

sat

- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 - - - - -

Page up▲