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January February March April May June July August September October November December
2011(Sat)

「ブラックランズ」ベリンダ・バウアー著

読感/翻訳小説

「ブラックランズ」ベリンダ・バウアー著/

十二歳の少年スティーヴンは、今日も母の弟ビリーの遺体を捜してヒースの茂る荒野にシャベルを突き立てる。十九年前に起きた連続児童殺害事件以来、被害者の母となった祖母は心を閉ざし、母もまた鬱屈した感情を抑えることができない。傷の癒えない家族を変えるためには、ビリーの遺体を発見し、事件を完全に終わらせるしかないと考えたスティーヴンは、やがて殺人犯である獄中のエイヴリーと手紙のやりとりを開始する。猟奇的殺人犯と十二歳の少年の危険な往復書簡は、次第に二人を思わぬ方向に導く…。英ゴールドダガー賞にノミネートされた傑作スリラー登場。

↑本の内容紹介から。

十二歳のスティーヴンの叔父ビリーは、十九年前に起こった連続児童殺人事件の被害者となります。犯人は捕まっているけれど、遺体は見つかっていない。
その事件が暗く影を落として、お祖母ちゃんは心を閉ざし、ビリーの帰りを待ち続ける。スティーヴンのお母さんはそのことから、お祖母ちゃんに顧みなられない存在となって、現在お祖母ちゃんとお母さん、スティーヴンと五歳になる弟の四人暮らしの家庭は、笑顔もままならない。
ビリーの遺体が見つかれば、心の整理がついて、家族が幸せになるはずだ!と、スティーヴンは三年近く荒野をシャベルで掘り続ける――と。
もう、スティーヴンが健気で健気で。
家族を心配するスティーヴンですが、それ故に暗い顔をしてしまえば、お母さんにはあまり可愛げがないと思われて……。
お母さんは、弟の方を可愛がる(五歳なので何もわからないから、弟は無邪気なわけで……)
お母さん、スティーヴンはお母さんや家族のために、がんばっているんだよ!
思わず、叫びたくなります。
終盤でもスティーヴンは、自分よりも他人のことを優先したりしてね(……もう、なんて健気なの)
そうして、スティーヴンは犯人であるエイヴリーに手紙を出し、ビリーの遺体の隠し場所を聞き出そうとします。
二、三行の短い手紙のやり取りは、エイヴリーにスティーヴンへの興味を募らせて……。
(ここから先は、ハラハラドキドキの展開が待ってますが、ネタバレになりそうなので自重)
一部、やり過ぎだなーと思った部分がありましたが。
スティーヴンのがんばりと健気さが、とても胸に来ました。

ブラックランズ (小学館文庫)ブラックランズ (小学館文庫)
(2010/10/06)
ベリンダ バウアー

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21

January February March April May June July August September October November December
2011(Sun)

「泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる」永嶋恵美著

読感/国内小説

「泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる」永嶋恵美著/

「あなたの恋人、友達のカレシ、強奪して差し上げます」──こんな広告に、今日も半分疑い、半分救いを求めて、オフィスCATに電話する女性たちが……。オフィスCATの皆実雛子(みなみ・ひなこ)が、もつれた恋愛問題を、解決したとき、ふと気付くと皆癒され、つぶやくのです。「雛子がいてくれてよかった」と。

↑本の内容紹介から。

「宵闇キャットファイト」
「孔雀たちの夜宴」
「夜啼鳥と青い鳥」
「烏の鳴かぬ夜はあれど」
「別れの夜には猫がいる」

――五編収録。
「泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。」の続編です。
続編希望していたので、続きが出て嬉しかった。
今回も依頼人視点で様々な恋愛の修羅場が繰り広げられます。
といってもそんなにドロドロしてませんが!
恋人を横取りされた相手から強奪させて、相手に自分と同じ気持ちを味合わせたら?と、一緒に依頼しようと持ちかけられて、オフィスCATに依頼した咲紀さん。そうしたところ、実は意外な企みが――と、今作も色々なパターンで読ませてくれるので、飽きません。
ヒナコさんに手のひらで踊らされている見習いの楓さんや、親権争いをしている男女の間に割り込んだり、また見習い楓さんの過去など。
読めば読むほど、雛子さんの過去が気になります。
(自分が傷つくのを厭わない献身さは、ときに危うい感じがして)
ヒナコさんの過去のお話を読みたいなー、とシリーズが続くことを希望します。

↓どうやったら、他人になりきれることが出来るのかという、質問へのヒナコさんの答え。
他人になるならないはともかく、何かしら人には理由があるのだと考えることは大切なことだよな、と思ったり。

『想像力と理解力よ。どんなに自分とかけ離れた女でも、彼女なりの動機があって、行動がある。それさえ掴めれば、同じ女だもの。なりきるのは容易いわ』
(「別れの夜には猫がいる」P75より)


泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる (徳間文庫)泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる (徳間文庫)
(2011/08/05)
永嶋恵美

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泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。 (徳間文庫)泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。 (徳間文庫)
(2010/11/05)
永嶋 恵美

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January February March April May June July August September October November December
2011(Sat)

「ジョニーは戦場へ行った」ドルトン・トランボ著

読感/翻訳小説

「ジョニーは戦場へ行った」ドルトン・トランボ著/

戦場で砲弾にあたり、目、鼻、口、耳をそぎとられ、両脚、両腕まで切断された青年ジョニーが過去から現在、現在から未来へとめぐらす想念…。発禁にあいながら反戦の想いをこめて版を重ねた問題作。

↑本の内容紹介から。

戦場で目、鼻、耳、口を削がれ、両腕両足もまた壊疽で切断された青年ジョニー(ジョー・ボナム)の物語です。
本の内容紹介ではジョニーがどういう状態にあるのか明かされていますが、小説の始まりでは彼は自らの状態がどんなであるか知りません。
幸せだった頃の記憶、戦場でのこと、思考が巡るなかで、彼は自分の耳が聞こえないことを知り、目が見えないこと、手足が切断されていること、口がなく自発呼吸していないといったことを徐々に把握していきます。
決して、戦場に行きたくて行ったわけではなく、徴兵されて異国に向かったその先で待ち受けていた現状に対し、後悔と悲愴が読んでいて苦しいです。

戦時中でも財産を保護する法律はごまんとあるが、人間の生命保護について書かれた本は一冊もない。
(「ジョニーは戦場へ行った」P127より)


お願いだ、われわれが見、感じ、言質をとり、理解できる戦争の目的を与えてほしい。本国のように意味のない大言壮語をいう国はもう真っ平だ。母国、祖国、故国、本国。みんな同じだ。死んでしまってから本国ははたしてなんの意味をもつのかだろうか? 死んだあとでだれの本国になるのだろうか? 本国のために戦って死んでしまえば、よく調べずにものを買ったようなものだ。金を払ったはいいが、なにも手に入らなかったのとおんなじだ。
(「ジョニーは戦場へ行った」P131より)


第一部が死者、第二部が生者という二部構成で。
第二部では、外部に伝える術がなく、思考だけが許された生きる屍となったジョニーがやがて皮膚から感じる振動で、外界との交信を試みようとする。
そうして、ジョニーは自らでもって、人々に戦争を体現しようとするのですが……。

死んだ方がマシだと言うような絶望。
戦場に向かえば誰しもがジョニーのようになるかもしれない、反戦へのメッセージが込められていることで、戦争自体にも色々と考えさせられますが。
外からはただの肉の塊にしか見えなくなっても、そこに意思はあるのだとすれば、人間という存在についても、考えさせられます。
果たして、自分がジョニーのような状態になったら、正気を保っていられるだろうか……。
考えると、怖くなりました。
また、戦争のたびにこの本は、アメリカでは発禁処分を受けたという……。
(原著の初版は1939年)
そんな社会の思惑と、それでも今に至るまで版を重ねて出版されてきた、人々が願う平和と。
読んでいて苦しかったのですが、考える機会に出会えたことはとても良かった思います。

ただ一つ注文をつけるなら、問題はこの本が現在……品切れだということ。
(古本屋で見つけた)
……いや、たまたまですよね?
(反戦への関心が薄れていっているとは考えたくない)

ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)
(1971/08)
ドルトン・トランボ

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January February March April May June July August September October November December
2011(Wed)

「開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―」 皆川博子著

読感/国内小説

「開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―」 皆川博子著/

18世紀ロンドン。増える屍体、暗号、密室、監禁、稀覯本、盲目の判事……解剖医ダニエルとその弟子たちが辿りついた真実とは? 18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が……解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくときに哀しい不可能犯罪に挑む。

↑本の内容紹介から。

18世紀のロンドンを舞台にしたミステリです。
まだ解剖学に偏見があるこの時代、ダニエル先生と五人の弟子・エド(エドワード)、ナイジェル、クラレンス、ベン(ベンジャミン)、アル(アルバート)の解剖教室で妊婦の遺体を解剖しようとしていたところ、治安隊員(この時代、警察と呼べるような組織はまだない)が乗り込んで来たところから、お話の幕が上がります。
解剖医学を発展させるには、肝心の遺体が足りない故、解剖に必要な遺体を墓守から融通して貰っている現状、後ろ暗いわけで。慌てて、遺体を隠すわけです。
そうして追っ払って、解剖を再開しようと遺体をひき出したら、今度は治安判事本人が登場。
さすがに言い逃れできず、遺体を隠していた包みを開いたら、四肢を切断された違う死体が出てくる!
と、序盤はドタバタと喜劇の様相を見せながら、キャラの魅力やユーモアありと、読みどころが沢山あって、面白かったです。
ダニエル先生が解剖医学以外の方面には無頓着というか、裏表がない実直さで、弟子たちが敬愛するのが、わかるな。
そして、それが(ネタバレ自重で黙ります)
他にも、解剖医であるダニエル先生を主役にするため医学がまだ明るくないこの時代、舞台設定にしたのかなと思っていましたが、そうじゃない。
この時代ならではというか、この時代でしか成立しないといいますか(ネタバレになるので黙る)、舞台を遺憾なく使っているところも凄い。
話は二転三転と、思わぬ方向に転がり、どんでん返しもあって最後まで、目が離せませんでした。
ラストの解剖ソングに絡めた幕引きの余韻が、もうね、素晴らしかったです。
始まりや終わりは舞台劇を意識した様な構成で、上質な悲喜劇を鑑賞させて貰ったかのよう。
凄く、凄く、良かったです!

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
(2011/07/15)
皆川 博子

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January February March April May June July August September October November December
2011(Sat)

「最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件」ケイト・サマースケイル著

読感/その他

「最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件」ケイト・サマースケイル著/

1860年、ヴィクトリア朝時代の英国。6月のある朝、のどかな村にたたずむ屋敷“ロード・ヒル・ハウス”の敷地で、当主の3歳の息子が惨殺死体となって発見された。殺された子どもは施錠された屋敷内にいたはずだった。犯人は家族か、使用人か?世間が注目するなか、捜査の任についたのはジョナサン・ウィッチャー警部。1842年にスコットランド・ヤード刑事課が創設された際に最初に刑事になった8人のうちのひとりで、ずばぬけた技量を持つ敏腕刑事である。優れた推理力をはたらかせ、事件の謎に迫るウィッチャー。しかし、非協力的な遺族や、プライバシー神聖視の風潮、加熱する報道、さらには刑事への偏見もあいまって、事件は数奇な道すじをたどる―ヴィクトリア朝英国を揺るがし、後に数々の探偵小説が生まれるもととなった幼児殺害事件の驚くべき真相とは。当時の特異な世相をも迫真の筆致で描き出す圧巻のノンフィクション。サミュエル・ジョンソン賞ほか受賞作。

↑本の内容紹介から。

ヴィクトリア朝の英国で、中産階級家庭で起こった幼児の殺人事件をスコットランド・ヤードに創設された刑事課の警部が謎に迫るという、探偵小説の手法で書かれたノンフィクションです。
前妻の子供たちが冷遇され、後妻(前妻が生きている頃は家庭教師だった)が生んで、両親から溺愛されていた子供が被害者に。
父親は工場監視という役職柄、地元に親しまれておらず、子守りの女性との関係を疑われたり、また彼自身、警察にあまり協力的ではない行動に疑惑が疑惑を呼ぶ。
犯人とされる人物は警部自身の口からは、割と早くに明言されるのですが、証拠がなかったり、地元警察との足の引っ張り合いと申しましようか。
それに事件に対する報道の過熱ぶりやにわか探偵化する大衆といった背景に、逆にウォッチャー警部が貶められたりと。
いつの時代も人間という生き物は変わらんのだなという、滑稽さを覚えたりしましたが……(ワイドショー的とでも言いましょうか(苦笑)
しかし、この事件やウィッチャー警部をモデルとした小説が引き合いに出されたりして、翻訳ミステリが好きな人間としては、大変楽しめました。
ノンフィクションなので、小説のように整然とこの事件だけを追うというわけでもないので、人によっては長く感じられる部分もあるかもしれません。
ですが、当時、刑事という存在がどういう風に見られていたかとか、また他にどんな事件が起こっていたかとか。資料として、興味深く読めました。

最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件最初の刑事: ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件
(2011/05/20)
ケイト・サマースケイル

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