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January February March April May June July August September October November December
2012(Thu)

「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子著

読感/国内小説



「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子著/

2010年6月、私は急性白血病だと告知された。愛してくれる人たちがいるから、なるべく死なないように頑張ろう。たくさんの愛と勇気、あたたかな涙と笑いに満ちた壮絶な闘病記。

↑本の内容紹介から。

好きな作家さんは山のようにいるけれど、五本の指の内に上げるとしたら、加納朋子さんは外せない!というくらい、大好きな作家さんです。
(私が日常の謎系のミステリにハマったきっかけは、加納さんのご本だったので)
そんな加納さんの久しぶりの新刊に、わーいとなっていましたが。実は、御自身の闘病記と知って、心臓が凍りつきました。
何しろ病名は「急性白血病」
病名から先行するイメージは、いわずもがな……。
そんな急性白血病を告知されてからの闘病記です。
治療の過酷さが伝わって来る中にも、前向きでユーモアを失わない加納さんの強さに敬服します。

髪の少なさ(抗がん剤治療で髪の毛が抜けているわけで)をテレビの俳優さんと競っては、勝った負けたと勝負したり。
無菌室に入れる機会はそうそうないと、携帯で写真を撮ったり、お医者さまに後に取材の約束を取り付けたりと。
決して諦めず、未来を考えている。
備えあれば憂いなしと、入院中も体力作りに運動をされたりと。
それが病棟で「一番元気な患者さん」に繋がったのかな。
加納家の親族は常に三十分前に集合場所に向かうといった家系で――その辺、加納さんだけではなく、ドナーになれるかもと弟さんは、加納さんの病気発覚と同時に禁酒したりと。
このご本も、単なる記録ではなく、知っていたら有効ではないかという情報発信の意図が大きいように感じられました。

絶食が続くと胃腸の粘膜が委縮し、細菌による感染の危険が増大する。患者の苦痛はさらに増し、その期間も延びてしまう。負のスパイラルだ。(P279より)

↑加納さんは口腔ケアをしていたので、治療で悩まされるという口内炎が出来ず、食事も自分の口から取られていた。また、イメージだけが先行する病気についても、御自身が噛み砕いて理解した言葉で綴ってくれるので、読んでいる方もわかりやすいです。

情報は、闘うための力です。ですがまず、情報に押し潰されないだけの強さと冷静さを、少しずつ育ててください。~

御自身の経験を他の方の役に、そして家族や友人、医療関係者だけではなく、知らない人たちにたいしても(あとがき参照)感謝の気持ちを忘れない――小説で触れたお人柄そのままの加納さんが、生きていらして、そのお言葉にまたこうして触れることが出来て、本当に、本当に良かったです。
どうか、御無理をなさらずに、お身体を大事にしてください。

無菌病棟より愛をこめて無菌病棟より愛をこめて
(2012/03)
加納 朋子

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January February March April May June July August September October November December
2012(Fri)

「サクラ咲く」辻村深月著

読感/国内小説

「サクラ咲く」辻村深月著/

若美谷中学1年5組の塚原マチは、自分の意見を主張できない、頼み事を断れない、そんな性格を直したいと思っている。ある日、図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには、丁寧な文字で『サクラチル』と書かれていた。貸出票には1年5組と書いて、消された跡がある。書いたのは、クラスメイト?その後も何度か同じようなメッセージを見つけたマチは、勇気を振り絞って、返事を書いた。困っているはずの誰かのために―(「サクラ咲く」他2編収録)。中高生が抱える胸の痛み、素直な想いを、みずみずしく描いた傑作。中学生から。

↑本の内容紹介から。

「約束の場所、約束の時間」
「サクラ咲く」
「世界で一番美しい宝石」
三編収録の、中高生が主人公のYA向けの短編連作です。
(上から二編の初出は進研ゼミの「中学講座」)

「約束~」はタイムスリップで未来からやって来た少年との交流で、主人公の少年が成長していくお話。
「サクラ咲く」は自己主張できない主人公が、図書館の本の間に挟まったメモをかいして、これまた交流しながら成長していくお話。
ちょっと日常の謎系の雰囲気を醸し出しつつ、ほのぼのとした恋愛要素もあります。
「世界~」は映画同好会に所属する主人公が、主演に出て貰いたい先輩を口説き落とすお話です(←語弊あり!)
別々のお話かと思っていたら、そうきたか!
(ネタバレっぽいので反転→「約束~」と「世界で~」の繋げ方が素敵
中学生向けなのでお話は全体的に繊細で優しく、
(辻村さんの今までの作品にあるような、心の奥をぐりぐりと抉って来るような部分は抑えられつつも、「世界で~」に出てくる「新聞部の人」はまあ、辻村さんらしい悪意の描き方だったなと思いますが)
読了後は、ほんわかと心が温かくなりました。
(読後は今までの作品も温かく優しいものがありますよ!)
ゲーム、本、映画とお話を通して、好きなものを語っている部分は読んでいて、ちょっとニヤニヤするというか。
「本を読むの、大好きなの」立花先輩の言葉に、うんうんと頷く頷く。
辻村さんの本を初めて読むって人には、最初にこの本がいいかもです。

サクラ咲く (BOOK WITH YOU)サクラ咲く (BOOK WITH YOU)
(2012/03/17)
辻村 深月

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January February March April May June July August September October November December
2012(Wed)

「ニンジアンエ」古処誠二著

読感/国内小説

「ニンジアンエ」古処誠二著/

インパール作戦前年のビルマ。新聞記者の美濃部は日本軍の英印軍討伐に同行する。捜索が順調に進むほどに、美濃部の胸中にいくつもの疑問が生じていく。捕虜になったイギリス人は、なぜ不遜な態度を崩さないのか?ビルマ人の人質はどこに消えたのか?すべての謎が解けた時、美濃部は「戦地の真実」を突きつけられる。それぞれの正義と信念を圧倒的な筆力で浮き彫りにした傑作長編。

↑本の内容紹介から。

ビルマで宣撫班に同行取材する新聞記者の目を通して描く戦争小説です。
古処さんの戦争小説は、戦争の悲惨さや「戦争反対」と声高に叫ぶのではなく、淡々と当時のことを描かれるので、読んでいるこちらとしては色々と考えさせられます。
宣撫とは、地元住民との間を取り持ち、人心を安心させること。
戦争ってのは、決して敵味方の二分で決着付くわけではなく、そこに生きている住人たちの存在があったのなら……それらの人々の生活を脅かす戦争の愚かしさが、沁みてきます。
今回は主人公が兵士ではなく、民間人の新聞記者ということで、報道する側の心理が描かれれば……受け手側が賢くならなければ、いけないよな……と、昨今のマスコミの報道からもね。しみじみと思いました。

「ですが、主旨を絞り込むと事実を偽ることになります。不要なものを排除するといえば聞こえはいいですが、要不要の判断が作る側にあるのですから」
 その割り切りを新聞記者はどうつけているのかと奥山兵長は暗に問うていた。自分のさじ加減ひとつで人の感情を操作できる事実に、きっと恐れに近いものを覚えていた。
「これですべてだと思わないことです」
「どういう意味ですか」
「紙芝居だろうと新聞記事だろうと、受け取る側にとっては入口にすぎないということです。三歳の子供でも考える力はあります。奥山さんの紙芝居を入り口として戦況を大雑把に知ったあとは、子供たちも自分の目と耳で肉付けをするはずです。相手を信じることだと言えば大げさでしょうか」
(P254より)


捕虜にした英国人将校の「どちらが勝つか」との問いに「日本です」と揺るがない答えを返すところが、その後の歴史を知っているだけに何とも……。
勝つために、犠牲を無駄にしないためにと――。

あっけない戦闘は激しく、あっけない死は雄々しく書く必要がある。
(P288より)



「ニンジアンエ」はまだ日本が優勢な状況下でのお話ですが。
ビルマからの撤退の様子を描いた「メフェナーボウンのつどう道」と合わせて読むといいかもです。


ニンジアンエニンジアンエ
(2011/11/25)
古処 誠二

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メフェナーボウンのつどう道メフェナーボウンのつどう道
(2008/01)
古処 誠二

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January February March April May June July August September October November December
2012(Tue)

「冬の灯台が語るとき」ヨハン・テオリン著

読感/翻訳小説


「冬の灯台が語るとき」ヨハン・テオリン著/

エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷に住みはじめたヨアキムとその家族。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈む彼に、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋…そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる―。スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く傑作ミステリ。

↑本の内容紹介から。

「黄昏に眠る秋」に続く、スウェーデンのエーランド島を舞台にしたシリーズの第二弾です。
前作のその後(季節が一周してるのかな?)ですが、事件自体は別物なので、このお話から入っても大丈夫です。
(前作のネタバレもないので)
夏の観光シーズン以外は寂れているエーランド島のどこか物哀しげな雰囲気が、個人的にはとても好きで、楽しみにしてました。
舞台は冬で、灯台を望む屋敷に越してきた一家に訪れた悲劇を主軸に、前作同様に喪失の深さとそれを乗り越えていく過程が読ませます。
現代パート(といっても1990年代)の間に挟まれるのは屋敷の不幸の歴史。
主人に手をつけられ子と共に死産した女中、ウナギ漁の途中で氷河の亀裂に呑み込まれた兄、などなど)百年以上に渡るそのエピソードが、読んでいるこちらに家が「呪われている」という暗示をかけてくるというか。
だから、何かが起こりそうという不安がじわじわと積み重ねられる中で、悲劇が起こる。
呪い」的なものを感じてしまっているせいか、とにかく、耳を澄ませば死者の気配が聞こえてきそうな雰囲気を感じる。
なもので、大切な人を失くしてしまったヨアキムが、還って来るはずないとわかっていながら、求めちゃいけないとわかっていながら、それでも心のどこかで「もしかして」と思ってしまう……その心情に同調して読んでいて、切ない。
そうして、作品の中では幽霊の存在は否定も肯定もせず、その辺りは読み手に預けられているところがまた、ニクイ(笑
お話はゆったりと淡々と流れていくので、人によってはじれったいと思うかもしれませんが、私は喪失にどこか感情が麻痺してしまったような(そういう時って、時間がやたらと長く感じられると思うんですよね)感じが存分に表現されているように思えて、とても良かったです。
「黄昏~」ともども、タイトルもいいよね!
というわけで、シリーズの春が今から楽しみです。

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2012/02/09)
ヨハン テオリン

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黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2011/04/08)
ヨハン テオリン

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January February March April May June July August September October November December
2012(Sat)

更新。

更新報告。

読み切り短編「エピローグまで、あと少し。」更新しました。

ホワイトデーを題材にしたお話です。
まあ、ホワイトデーなんで、現代の恋愛話になります。
久しぶりの一人称で、現代ものなんで、楽しかったです。
興味ある方は、お付き合いくださいな。
内容は、↓な感じ。新しい話です。

恋愛に興味がなかった私が、初めて男の子にチョコレートを贈ったバレンタイン。
まったくの反応がないまま、ホワイトデーを迎えたこの一ヵ月はまるで拷問だった。
そんな初恋の顛末は――。


↑少し暖かい春を想定して書いたけれど、実際、書いていた一週間は天気が悪くて、灰色の空しか見えなかったという……。
まあ、南の方の暖かい地方の話と、受け止めてください(笑)

それはともかく、花粉が本格化してきましたね。
やっと寒いのと、バタバタ週間が落ち着いてきたので、小説書きをがんばろうと思った矢先……。
(集中力が足りないのは、自分のせいだろ)
まあ、ぼちぼちと。
五月の中ごろまで(私の花粉時期は長いのですよ……)テンション低めだとは思いますが、気にしないでくださいませ。

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January February March April May June July August September October November December
2012(Sat)

「サーカス象に水を」サラ・グルーエン著

読感/翻訳小説



「サーカス象に水を」サラ・グルーエン著/

大テントの中に鳴り響く、大歓声と拍手。いよいよ目玉の演目、象の曲芸がはじまった。
と、異常事態を知らせるマーチが場内に鳴り響く!逃げ惑う客、脱走する動物たち―そのとき、ぼくは見てしまった。
「彼女」があいつを殺すところを…。
それから70年。93歳の老人は、移動サーカスで過ごした四ヶ月間を語り始める。
芸なしの象、列車から捨てられる団員、命がけで愛した女性、
そしてサーカス史上に残る大惨事のさなかに起こった、あの静かな「殺人」のことを。

↑本の内容紹介から。

恐慌時代、有名大学で獣医を志していた主人公のジェイコブは事故で両親を失い、時代が時代故に学費のあてもなく、やけっぱっちになって飛び乗った列車は移動サーカス団のものだった。
そんな過去を回想する老人ジェイコブと、若い頃のジェイコブ視点で構成され、お話は一人称で綴られていきます。
現代のジェイコブは家族に引き取られずに、老人ホームで身体や記憶がままならない状況。
若かりし頃のジェイコブと並行して語られるので、老いるということの残酷さが何だかまざまざと突き付けられるようでした。
そうしてサーカス団で獣医(正確には卒業試験を受けていないから、獣医ではないんだけれど)として雇われたサーカス団の、華やかな表舞台とは裏腹の世界は恐慌時代とあって実に何と言うか……(使えなくなった人間が捨てられていくところとか
ジェイコブとウォルターの間に友情が生まれていくところは良かった(……けれど、彼の最期が涙、涙、涙
そうしたなかで、動物たちに愛情を注ぐジェイコブは、動物使いのマーリーナに恋をするんですが。彼女には二面性の顔を持つ夫が……と。
事件はプロローグで、語られていたので「どうしてそうなった?」「その後は?」と気になって読み進めていたんですが、終盤で「あっ!」と驚かされました。
ミステリ的な仕掛けに、騙された!
そしてラストは温かく、読んで良かったです。

「恋人たちのパレード」という邦題で映画が現在公開中とのことです。

サーカス象に水を (RHブックス・プラス)サーカス象に水を (RHブックス・プラス)
(2012/02/11)
サラ グルーエン

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02

January February March April May June July August September October November December
2012(Fri)

更新。

更新報告。

読み切り掌編集「星屑断章」、「王の聖婚」更新しました。

秘密を一編、書いているのでどっちを更新しようかなと悩みましたが。
もう一本、外出編のその後という形で書こうかなと思っているネタがあるので(ちゃんと書けるかどうかは、わからない!)……この次に。
もっとも、次はホワイトデー小説かなー、とも思ってますが。(←まだ書いてないけどね!)

そんなこんなで、「王の聖婚」です。
8枚の掌編です。
掌編は雰囲気重視ですので、お好みに合いそうな方だけお付き合いくださいませ。
今回の「王の聖婚」は「ケルト事典」をパラパラと捲っていて、目についた単語でイメージを広げてみました。
↓事典にあったもの。勿論、書くにあたっては私が作った世界観に合うよう、改変してますが。
(というわけで、書いた人は色々と面白かったです)

【聖婚】
~略~ ケルト人の宗教範囲では、聖婚の概念はたいてい王が女神あるいは女性として擬人化された大地の夫であるという考えを表すために現われる。~略~ 
【ファール】
またはリア・ファール。 ~略~ 昔、王を選出する際に、王にふさわしい者がこの石の上に立つと、石は叫ぶと信じられていた。 ~略~ 

ケルト事典ケルト事典
(2001/09)
ベルンハルト マイヤー

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