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January February March April May June July August September October November December
2012(Sat)

「わたしの名は赤 上・下」 オルハン・パムク著

読感/翻訳小説

「わたしの名は赤 上」 オルハン・パムク著/

1591年冬。オスマン帝国の首都イスタンブルで、細密画師が殺された。その死をもたらしたのは、皇帝の命により秘密裡に製作されている装飾写本なのか…?同じころ、カラは12年ぶりにイスタンブルへ帰ってきた。彼は件の装飾写本の作業を監督する叔父の手助けをするうちに、寡婦である美貌の従妹シェキュレへの恋心を募らせていく―東西の文明が交錯する大都市を舞台にくりひろげられる、ノーベル文学賞作家の代表作。国際IMPACダブリン文学賞(アイルランド)、最優秀海外文学賞(フランス)、グリンザーネ・カヴール賞(イタリア)受賞。

↑本の内容紹介から。

「わたしの名は赤 下」オルハン・パムク著/

細密画師の惨殺事件につづき、第二の殺人が起きる。いまだ捕えられていない犯人の動機は、すべてあの装飾写本にあるのだと囁かれる。皇帝の命令により、カラは犯人を探すことになった。だが、一連の事件は、恋仲となった従妹シェキュレとの新生活にも暗い影を落とす―個性豊かな語り手たちの言葉から立ち上る、豊穣な細密画の宇宙。東西の文化の相克と融和を描き出し、世界が激賞した第一級のエンターテインメント大作。

↑本の内容紹介から。

「白い城」が割と気に入ったので(実はよくわかっていない気がするんだけど、文章が語彙豊かで好みだったもので)同じ翻訳家の方が訳された新訳版に手を出しました。
(「白い城」を読む前から、「わたしの名は赤」には目をつけていましたが)
「白い城」が自己の存在を問うようなお話だったんですが、こちらは犯人探しのミステリ――皇帝から依頼された装飾写本に携わっていた細密画師が殺害され、その犯人を探す――というよりは、イスタンブルにおける細密画の歴史とその行方といった色合いが強いのですが。
イスラム教では偶像崇拝が禁止されているという、文化背景のもとでの細密画は、西洋絵画とは違いあくまでも書物の挿絵という、脇役的な存在。
だからこそ西洋画の自由さに惹かれ、それが悪魔的と見なされる。
この細密画の描写の細やかさや、なかなか触れることが出来ないイスラム文化と、読みどころが沢山で、面白かったです。
お話は、「わたしは屍」と最初に殺された犯人の語りから入り、「わたしの名はカラ」、「わたくしめは犬にござい」「わたしは人殺しと呼ばれるであろう」と、語り手が次々と変わっていく構成です。
その構成に最初戸惑ったけれど、慣れて来るとそれぞれに味わいがあって良かったです。
犯人の語りもありますが。
でも、この語りで読み手が犯人を誰かと指摘できるかと言えば、かなり難しく、終盤まで犯人はわからなかったです。
そして沢山の語り手から紡がれるお話の中では、個人的には噺家による「金貨」「死」「女」が特に面白かった。
主人公のカラがまあ、探偵役というには頼りなく、恋心に翻弄されていて。その相手役のシェキュレがまあ……二人の男を恋に焦らさせている割には、結構、打算的と言いますか。
(この辺、語り手が多いので色々な方向から人物像が描かれて、また面白い)
シェキュレは読み方によっては好悪が分かれそうだけど、二人の子供の母としてなら、あのしたたかさは、有りかなと思いました(笑)
うん、女としてではなく母親として幸せな家庭を望むなら、いい条件を求めなきゃな。子供たちのためにも。
(女性が自立できるような、現代社会とはまた違う文化ですしね)
色々と面白かったです。


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白い城白い城
(2009/12/17)
オルハン パムク

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January February March April May June July August September October November December
2012(Tue)

「灰色の季節をこえて」ジェラルディン・ブルックス著

読感/翻訳小説

「灰色の季節をこえて」ジェラルディン・ブルックス著/

1665年春、イングランド中部の村がペスト渦に襲われた。村に腰を落ち着けたばかりの旅回りの仕立て職人が、首にできた瘤から悪臭を放って死んだ日が始まりだった。すべてを燃やせ!――仕立て職人の遺した言葉に村人は耳を傾けなかった。まもなく病は燎原の火のように広がりはじめた。18歳の寡婦アンナの家も例外ではなく、幼い息子二人をたちまち死神が連れ去った。底知れぬ絶望と無力感に覆われた村では、やり場のない怒りが人々を魔女狩りへと駆り立て、殺人事件さえ起きた。アンナが仕える若き牧師夫妻は近隣に疫病が広がるのを防ぐために、村を封鎖してこの地にとどまり、病に立ち向かうよう呼びかけた。だが、有力者一族は村を見捨てて立ち去り、死者はとめどなく増え続ける……
史実をもとに、巧みなストーリーテリングと瑞々しい感性で綴られる、底知れぬ絶望と恐怖、そして「再生」の物語。著者を歴史小説界の頂点に押し上げた記念すべきデビュー長篇。

↑本の内容紹介から。

ペストの感染拡大を懸念し村を閉鎖した牧師夫妻に仕えるアンナの眼を通して描かれた歴史小説です。
「古書の来歴」「マーチ家の父」のジェラルディン・ブルックスのデビュー作になります。
お話はフィクションが混じっているけれど、エピソードには実話が元になっていて、ジャーナリストという職業柄か、取材などが徹底されているようなので、下地は安定感バッチリといいますか。
語り手は夫を鉱山事故で亡くした寡婦のアンナ。二人の幼い子を抱えた彼女の元に、仕立屋が下宿する。
その仕立屋が熱病で倒れ、あっという間に死亡。
暫く、間を置いてネズミの死骸で遊んでいた隣人の子が発病し、村にたちまちペストの脅威が広がって行きます。
村人たちが村から避難すれば、近隣への感染が拡大する――ということで、牧師夫妻は村を閉鎖することを決断(村の有力者は早々に自分たちだけで逃げて、外部から手助けもしないという!)
閉じ籠った村の中で、それでも疫病の猛威は収まることなく次々と……。
そして、アンナの子供たちも。
このアンナの息子であるジェイミーが、無邪気な愛情表現で薔薇の花びらを雨のように降らせるシーンがあるのですが。
その瞬間を「奇跡」と受け止め、幸福を感じているのが読み手としては伝わって来るなかでの喪失は……(涙)
病だけが人の命を奪っていくわけではなく、恐怖や絶望に追い詰められた人の精神というものは、誰かのせいにしたくなる弱さを持っていて……魔女狩りが起これば、村で助産などをしていた女性が私刑される形で、殺害されたり。
疫病の暴力的な猛威を前にした村人たちの恐怖や怒り、そこから来る狂気などが真に迫ってました。
と同時に、そこに生じる差別も……。
村から親戚を頼って出た二人に与えられた暴力とか……。
過去の歴史を読んでいるはずなのに、何故か現代が重なって見えたりして……色々と考えさせられました。
(特に罪もない人々の命が奪われていくところとか……うん、震災を重ねてしまって)
終盤はちょっと予想外の方向に話が転んだ気がしたけれど、沢山のものを失いながらも、それでも生きていくアンナの物語だったのだと、思います。
あの絶望の中で、それでもアンナは牧師の妻であるエリノアから文字を教わり、薬草の知識を身につけ魔女として殺された助産婦の代わりに、村の女性たちの出産を助けて――と。
そうして彼女が助けた命と、新たに得た命と生きていく
多くの「死」が語られていましたが、「生」のお話でもあると思いました。

灰色の季節をこえて灰色の季節をこえて
(2012/04/12)
ジェラルディン・ブルックス

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やたらとススメまくっている「古書の来歴」は文庫化したよ!
こちらも、良いですよ!

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January February March April May June July August September October November December
2012(Mon)

「長い日曜日」セバスチャン・ジャプリゾ著

読感/翻訳小説



「長い日曜日」セバスチャン・ジャプリゾ著/

第一次大戦中のある日曜日、戦場で5人のフランス兵が処刑された。婚約者を失ったマチルドは、事の真相を知ろうと調査を始める。その日何があったのか?生存者がいるという噂の真偽は?隠された真実の断片がジグソー・パズルのピースのように一つ一つ見事にはめ込まれていく。鬼才ジャプリゾが比類のない緻密な構成力で織り上げた情感溢れる傑作!アンテラリエ賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

第一次大戦中、処刑された五人の兵士。婚約者を失くしたマチルドは真相を探ろうとする――お話(というか、その記録という形の回想録と言った方がいいかな?)
数々の証言やメモ、手紙といったものが混然としているので、最初は慣れるまでちょっと戸惑いましたが。
少しずつ背景が明らかになって来ると、真相が知りたくて気がついたら時間を忘れて読んでました。
そうして集めた証言の中には戦争に引き裂かれた多くの人たちの人生が断片的に語られ、戦争について深く考えさせられました。
裁判に掛けられたのは、手を怪我した者たちで。
それを戦線から離脱するための故意の行為だということで(実際にそれが目的だった人もいるわけですが)見せしめのための処刑。
戦争から逃げたくなる兵士の気持ちとか。
帰った来ない人を待ち続ける辛さとか。
――戦争って、本当に……。
そうして、集まる証言の中にマネクの生存の希望を垣間見たり、だけど埋葬された事実が明らかになったりと……。
何度となく希望を打ち砕かれたりしながらも、それでも真相を知ることを最後まで諦めないマチルドの強さとか。
彼女を支える家族やマチルドを世話する使用に夫婦(マチルドは足が少し不自由)とか。
戦争を扱っているので、重いんですが。でも、読んで良かったです。

長い日曜日 (創元推理文庫)長い日曜日 (創元推理文庫)
(2005/03/09)
セバスチアン・ジャプリゾ

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↓「長い日曜日」の映画化したもの。
細かい部分の変更はあるものの、概ね原作に忠実でした。
でも、原作に登場しない郵便配達人が味があって、良かったです。
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(2005/08/05)
オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル 他

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January February March April May June July August September October November December
2012(Thu)

「サクソンの司教冠」ピーター・トレメイン著

読感/翻訳小説

「サクソンの司教冠」ピーター・トレメイン著/

フィデルマはローマにいた。幸い、ウィトビアの事件を共に解決したエイダルフが加わっている、カンタベリー大司教指名者の一行と同行することができた。ところが、肝心の大司教指名者がローマで殺されてしまったのだ。犯人はどうやらアイルランド人修道士らしい。フィデルマとエイダルフは再び事件の調査にあたるのだが…。美貌の修道女フィデルマが縺れた謎を解く。長編第二作。

↑本の内容紹介から。

「死をもちて赦されん」に続く、シリーズの長編二作目です。
(国内刊行は長編で5番目になります)
今回の舞台はローマ。共に前作で事件を解決したエイダルフ修道士が加わっているカンタベリー大司教指名者の一行、その大司教指名者が殺され、現場付近で目撃されたアイルランドの修道士が犯人らしい……。
けれど、ローマ側としては事実確認が成されないままでは、アイルランドとの間に争いが起こりかねないとして、フィデルマとエイダルフ修道士に調査を依頼します。
前作の教会会議の結果、ヨーロッパにローマ・カトリックの勢力が広がりつつ時代。
またイスラム教が勃興して(二十年くらい?)勢力を広げつつあるのが、今作の背景にあって、個人的にはそういった歴史的背景が読んでいて興味深く、楽しく読めました! 
偉そうな相手にはまったく媚びないフィデルマ姐さん、カッコいい!(でも、弱者には優しいんだよ!) 
今回、捜査の手足的に、ローマの若い衛兵がフィデルマとエイダルフ修道士について周るんですが、彼がね。最初、フィデルマをちょっと舐めていた部分があってそれが最後(ネタバレになりそうなので、反転→別れの時に贈り物をするなどして、フィデルマに転んでるのには、思わずニヤニヤしちゃいました
それを目にして、ちょっとエイダルフ修道士がちょっと不機嫌になったりと(ニヤニヤ、ニヤニヤ)
(この時代、修道士修道女の結婚は完全に禁止されてはいません)
アイルランドが舞台ではないけれど、端々で語られるアイルランドのブレホン法の素晴らしさは、やはり良いなー。(←現在にも十分、通じると思うんですが……アイルランドのその後の歴史がねぇ……)
(ローマでは女性の自由はないに等しい感じなので、余計にフィデルマの活躍が衛兵の彼には驚かされていた模様)
ミステリとしては犯人がわかりやすかったですが、それだけ丁寧に、情報を組みこんでいるということでもあります。
読み終わった後の巻末の訳註に、ほほうっと唸らされたり(最後から二番目の「黄色疫病」の項。これは是非、読後に目を通してみてくださいな!)
ホント、面白かったです!
この後の三作は既に読んでいるので、早く六作目が出ないかな。
続き、早く!

サクソンの司教冠 (創元推理文庫)サクソンの司教冠 (創元推理文庫)
(2012/03/10)
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死をもちて赦されん (創元推理文庫)死をもちて赦されん (創元推理文庫)
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↓短編集の方では、ローマ滞在中のお話も。
修道女フィデルマの洞察 (修道女フィデルマ短編集) (創元推理文庫)修道女フィデルマの洞察 (修道女フィデルマ短編集) (創元推理文庫)
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修道女フィデルマの叡智 修道女フィデルマ短編集 (創元推理文庫)修道女フィデルマの叡智 修道女フィデルマ短編集 (創元推理文庫)
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January February March April May June July August September October November December
2012(Sun)

更新。

更新報告。

「秘密を閉じ込めて」、「その光に触れて、夢を見る」更新しました。

12番目のお話のタイトル、書き込んであります。
こ、更新は……他の話の執筆の進み具合で……。
闇鍋の方、……新しい話を考えた方が早いかなーと、もやもや。
う、ん、まあ、ぼちぼち、がんばります(花粉と戦いながら)

えっと、まあ、お馬鹿さん仕様のトップページとなっております。
ここに辿りついた人はわかってると思うけど、普通にクリックしたらいつものページに行きますので。
お馬鹿さんは、お昼くらいまで!
(多分!)


サイトの方は戻しました。
いつもは↓のサイズが

PASTE3_20120401105358.jpg


4/1お馬鹿さん仕様で↓

(.. Read more)


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