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松原冬夜

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「聖餐城」 皆川博子著

読感です。

「聖餐城」 皆川博子著

虫のいい話だ。どうして、あんたとその女だけが特別に、神様から目をかけてもらえるのさ。兵隊だの娼婦だのの一人一人の運命まで、神様はご存じじゃないよ。

「馬の胎から産まれた少年」アディと、宮廷ユダヤ人の息子イシュア・コーヘン。二人の若者の運命が、果てなき戦乱の中で変転していく。国家全体が疫病にかかって、じくじくと膿み崩れてゆくような陰惨な戦いが連続した「ドイツ三十年戦争」を傭兵とユダヤ人の目線から描ききった、圧巻の大作! 旧教と新教、果てのない戦乱に、出口はあるのか。

↑本の内容紹介から。

紹介文ではアディとイシュアが主人公みたいですけれど、お話の視点はどちらかと言えば、アディとイシュアの兄であるシムションかな。

「三十年戦争」を扱った歴史小説だと構えると、難しく感じ、嫌煙してしまうかも知れませんが、頭を空っぽにして読めば、ファンタジーの戦記ものなどが好きな人にも十分楽しめる内容ではないでしょうか。
錬金術など、ファンタジー好きな人の好奇心をくすぐりそうな、エピソードも含まれますし。
読み終わった後、「三十年戦争」について調べてみると、すんなり頭に入って来て、歴史の勉強になるような(……わ、私の感覚だけどね)

当時の時代背景、そこに根付いていた差別、戦争の悲惨さ、略奪の残酷さなどが洗練された文章で密に描かれ、戦場描写も臨場感あふれ、登場人物も魅力的に描かれ、時代に流され変わって行く絆(コーヘン兄弟)や変わらない絆(ローゼンミュラー兄弟)や、傭兵、刑吏、商人たちの生き様など、主人公アディ以外の人たちにも目を向けさせられます。文字を追わずにいられません。
少しだけわがままを言えば、もう少しアディとユーディトのことを書いて欲しかったかも。
フロリアンへの忠義も、それはドラマチックでしたけれど。

ネタばれになるかもしれないので、反転。
アディとユーディトの身分差故に叶わない想いなど、もっと突っ込んで書いて頂けたらと、希望したり

それであと100ページ増えたとしても、全然苦にならない(例えばの話です)くらい引き込まれました!
良かったです!

聖餐城聖餐城
(2007/04/20)
皆川 博子

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