03

January February March April May June July August September October November December
2009(Sun)

「メイン・ディッシュ」 北森鴻著/「恋紅」 皆川博子著

読感/国内小説

「メイン・ディッシュ」 北森鴻著

小劇団「紅神楽」を主宰する女優・紅林ユリエの恋人で同居人のミケさんは料理の達人にして名探偵。どんなに難しい事件でも、とびきりの料理を作りながら、見事に解決してくれる。でも、そんなミケさん自身にも、誰にも明かせない秘密が…。ユーモラスで、ちょっとビターなミステリ連作集。文庫化に際して、新たに特別短編を加筆。さらに美味しくなった、スペシャル・メニューを召し上がれ。

↑本の内容紹介から。

紅林ユリエこと「ねこ」さんが雪の日に拾った「ミケ」さん。そして、ねこさんが主宰する劇団員たちとのコミカルな会話が楽しい。
特に座付き作家の(後にミステリ作家になる)小杉師匠のキャラが笑う笑う。
ねこさんの一人称の話の間に別視点の話が挟まりながら、話は進行していきます。短篇集のような形だけど、最後には一つの答えに行きつく仕掛け。
ちょっと「ん?」と思うところもあるんですが、全体的な楽しさとミケさんが作る料理の美味しそうな描写に、細かいことはどうでもよくなってくるような(笑)
文庫版では「特別料理」が書き下ろされているので、読むなら文庫の方がお勧めです。
この短編の小杉師匠の馬鹿っぷりに、笑う。
解決編を決めないで、問題編を書いては泣きついてくるなんて!
書いた本人にもわからない犯人を当てちゃうミケさんの名探偵ぶりが素敵。
楽しいキャラは小杉師匠ですが、一家に一人欲しいのはミケさんだな。

「恋紅」 皆川博子著

遊女屋の愛娘ゆうは大勢の花魁や男衆の中で、華やかな郭の裏も表も見て育った。ある日、芝居見物に出かけたゆうは升席にいる男を見て衝撃を受ける。5年前、雑踏で途方にくれていたゆうを救い、優しさで包み込んでくれた旅役者だった。一緒になれるなら滅びでもいい―そう心に刻んだ幼い日の記憶を頼りに、無名の役者に縋りついていく女の情念の世界を描く直木賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

遊女屋を営む笹屋の娘である「ゆう」が主人公。
幼い頃から、縛りつけられる人間と縛る人間を見つめてきたゆうは、遊女たちの哀れさを知りつつ、遊女屋の娘として仕方がないのだと諦めてしまう自分も知っている。
割り切れない感情を抱え、どちらにも属せない自分に揺れるゆうの成長が情緒あふれる文章で描かれ、しっとりと沁み入ってくる。
また染井吉野の誕生秘話に絡めるように描かれた物語のなかで、家を出て役者と共に旅をする先で彼女が埋めた種を思えば、多分これから先、染井吉野を見るたびにこの小説を思い出す気がします。
それくらい、心に残る物語でした。




Edit