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2010(Tue)

「パイド・パイパー - 自由への越境」 ネビル・シュート著

読感/翻訳小説


「パイド・パイパー - 自由への越境」 ネビル・シュート著/

フランスの田舎道でパンクのため立ち往生したバスは、ドイツ軍の編隊の機銃掃射を受けて動けなくなった。これから先は歩いてもらわにゃあ―。老イギリス人は、やむなくむずかる子供たちの手を引いた。故国を目差して…!戦火広がるフランスを、機知と人間の善意を頼りに、徒手空拳の身でひたすらイギリス目差して進む老人と子供たち。英国冒険小説界の雄が贈る感動の一編。

↑本の内容紹介から。

戦時、フランスに休養に来ていたイギリス老人・ハワード氏が戦況の悪化に伴い、帰国する際に子供を二人預かります。
その子らとの帰国道中の苦労話――と言ってしまうと、ドタバタした感じの印象を与えてしまうかもしれませんが。
語りは割と淡々としています。長閑だったフランスの田舎から、悪化していく戦況よってフランス国内で高まるの緊迫感など、伝わってきます。
翌日にイギリスに辿りついているだろうと楽観していた矢先、子供が熱を出して大事のために宿をとって休んでいると、ドイツ軍がフランスに侵攻してきてしまいます。
ここで再び、ハワード老人は一人の子供を預かります。
そうしてバスに乗って移動していれば↑紹介文にある通り。徒歩で移動するしかなく、その道中ではまた空爆によって目の前で両親を失ったらしい子供が!
放っておけないと、その子を連れて行くと――最終的に七人の子供を連れて帰ることになっていたり。
道中は暑く、そしてドイツ軍の侵攻によって交通機関がままならず、辿りついた先では既にドイツ軍に占領されていたりと、障害が一杯。
だけど、子供たちは(四歳~十歳)深刻な状況が把握できないわけで……ええ、子供たちってときにその無邪気さ(無知ともいう)で色々なことを台無しにしてくれたりするわけで!
(そんなこんなで、あんなことやこんなことに、読んでいるこちらとしてもハラハラさせられる)

そうしながら「何やってんの?」と思わず叱りたくなる場面でも、ハワード老人はひたすら忍耐で紳士的な態度を貫きます。
(素敵だ!)
魅力的なハワード老人を中心に語られるエピソードは、ときにホロリときたり、切なかったり、ほのぼのしたり。
両親を失った子は表情も喪失していたんですが、道中で笑顔を取り戻した場面とか、じーんときました。
また途中で老人に協力してくれるニコル嬢は、ハワード氏の息子ジョンと結婚の約束をしていた女性(でも、ジョンは既に戦争で亡くなっています。これがハワード氏が療養に来ていた理由)
そんなニコル嬢が語って聞かせるジョンとの恋の思い出話は、楽しげに語られる分だけ、じんんわりと切ないです。

終盤でもまた危機的状況に陥ったりと、最後までハラハラしました。面白かった!
それに、全体から戦争に子供たちを巻き込むことの罪深さや、人種などといった問題を考えさせられましたし、ハワード氏のような忍耐と責任感ある人間になりたいと、心から憧れます。
とても良い本でした! おすすめです!

パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)
(2002/02/22)
ネビル・シュート

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