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2010(Tue)

「月と蟹」 道尾秀介著

読感/国内小説

「月と蟹」 道尾秀介著/

小学生の慎一と春也は「ヤドカミ様」なる願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめる――他愛ない儀式はいつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。注目度ナンバー1の著者による最新長篇小説。鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれる、少年たちのひと夏が切なく胸に迫ります。

↑本の内容紹介から。

転校生であることから、クラスで疎外感を感じている慎一君と春也君は、ヤドカリを生贄として願いを叶える「ヤドカミ様」遊びを考えだします。
小さな願いごとが実現する裏には、(ネタバレ反転→二人が互いに対する友情があったわけですが
願い事は少しずつ自分たちを取り巻く環境(親の再婚話など)に向けられ、ままならない世界に取り残されたような孤独感や何かに縋りつきたい焦燥感とでも言えばいいのか。
子供とはいえ、子供であることに甘えられない分、大人になろうとする。
だけど、心がついていかない胸の内側で育っていく、妬みや絶望といった闇が重く。
そういった心理が伝わってくる描写の巧さに、読んでいるこちら側も苦しくなりました。
「大人になるのって、難しい」という言葉が印象に残ってます。
ただ、私は「光媒の花」で描かれた闇と光が好きすぎるので、こちらの作品は少しだけ後味が悪かったかな。

多分、このラストから成長した先に、光はあるのだと信じられるけれど……。
この終わりの時点では、見えないせいかな


情景描写、心理描写は本当に丁寧で美しいです。
文学よりの作品がお好きな方には、オススメです。

(道尾さんらしい、どんでん返しなどといったミステリ要素を求める人には、向かないかも)

月と蟹月と蟹
(2010/09)
道尾 秀介

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