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2011(Fri)

「マーチ家の父 もうひとつの若草物語」ジェラルディン・ブルックス著

読感/翻訳小説



「マーチ家の父 もうひとつの若草物語」ジェラルディン・ブルックス著/

妻と四人の娘を残し従軍牧師として北軍に加わったマーチは、激戦の合間に立ち寄ったヴァージニア州のとある農園を見て、以前ここに来たことがあるのに気づいた。20年前の春、若き行商人として訪れて長逗留したことがあり、それは美しく気高い奴隷女性グレイスとの出会いの時であり、また奴隷制度の残酷さを目の当たりにした日々でもあった。その後の歳月―マーミーとの結婚、哲人ソローやエマソンとの交流、逃亡奴隷の支援活動への加担、次々と生まれる娘たち…懐かしい思い出がマーチの脳裏をよぎる。だが、そうした思いをよそに、国を二分する戦争は彼の理想や信念を打ち砕き、運命を大きく変えていくことになる!世界中で愛された家庭小説の古典を下敷きに、豊かな想像力と巧みなストーリーテリングでアメリカの動乱の時代を生きる人々を描きあげた歴史フィクションの比類ない傑作。ピューリッツァー賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

名作「若草物語」の父親を主人公に据えて描かれたお話です。
従軍先から妻への手紙を綴りながら回想を交え、青年時代から妻との結婚、そして従軍に至るまでの心の変遷。
従軍先での理想と現実の温度差。
(実際に北軍兵士の全てが奴隷解放を目的として戦っているわけではないこと)
時代背景に奴隷解放の南北戦争がありますので、そこに描かれるものは重たいです。
「若草物語」の語られることなかった裏側――とはいえ、著者あとがきを読めば、かなり資料を読み込んで書かれているので、まるで実際にその現場を見ているかのように胸に迫ってきました。
南部大農園で、自由人となった元奴隷たちが賃金を対価に働いて、その農園の一時的な持ち主である青年と距離を縮めていく場面とか――その後に訪れた悲劇とか。
第一部は父であるマーチ氏のこと、第二部では「若草物語」を知っている人はあれです。
父危篤と手紙で、母が旅立った先でのマーチ夫人の視点が入ります。
そこで夫人は、(夫とグレイスとの関係を疑ったりと、かなり俗な人として描かれています
そんな人の弱さ、嫉妬といった感情の生々しさが小説という枠組みを超えて、何とも……。
個人的には、理想的というか、聖人と呼べるようなマーチ夫妻に対するこの血肉のつけ方は、凄いなと。
ただ、生身の人間と化したこのお話は、「若草物語」を好きな人の中には、受け入れられない人もいるのではないかなと思われます。
(かといって、「若草物語」を壊しているとも思わない)
私は上にも言ったように、「物語」をある種、リアルに感じさせた作者の筆力に感嘆するばかりですが。
あと、扱われた題材、奴隷問題や戦争といったものに色々と考えさせられました。

不当な行為を、不当な行為によって正すことはできない。
(ジェラルディン・ブルックス著「マーチ家の父」P280より)


……うん、戦争(暴力)でしか奴隷問題は解決できなかったのかな、とか。
(皆の意識改革でよって解決出来ていたら、とか)

マーチ家の父 もうひとつの若草物語マーチ家の父 もうひとつの若草物語
(2010/05/20)
ジェラルディン ブルックス

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ちなみにこちらの作者は「古書の来歴」の方です。
(何度もしつこいと思われそうですが、こちらもいいよ)
古書の来歴古書の来歴
(2010/01/21)
ジェラルディン ブルックス

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「若草物語」は私は↓でみましたが、こちらも良かったです。
若草物語 コレクターズ・エディション [DVD]若草物語 コレクターズ・エディション [DVD]
(2009/09/02)
ウィノナ・ライダー、スーザン・サランドン 他

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