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2011(Sat)

「誰かが足りない」宮下奈都著

読感/国内小説

「誰かが足りない」宮下奈都著/

予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。10月31日午後6時に、たまたま一緒に店にいた客たちの、それぞれの物語。認知症の症状が出始めた老婦人、ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年、人の失敗の匂いを感じてしまう女性など、その悩みと前に進もうとする気持ちとを、丹念にすくいとっていく。

↑本の内容紹介から。

美味しいと評判でなかなか予約がとれないレストランに、六組の客が予約を入れるまでの過程を書いた短編連作です。

故郷に帰れずにいる青年、認知症が出始めた老婦人、忙しさに忙殺されつつある女性、母の死がきっかけで引きこもりになった青年、延々とオムレツを焼き続ける料理人の青年、人の失敗の匂いを感じてしまう女性と。
それぞれが抱える足りないものへの悩み(誰かであったり、自分の中に対するものであったり)に向き合いつつ、それでも前へ進もうとするお話でした。
お店へ予約する――美味しいご飯を食べようという約束も、明日への希望があるからですよね、と。
読後しみじみと感じて、何だか読んでいるこちらまで気持ちが前向きになるような。

予約6のお話は、人の失敗の匂いを感じ取るということで、いきなりファンタジーっぽくなって、ちょっと戸惑いましたが、このお話が好きかな。
最終的なエピローグも含んでいるというところもありますが、深刻になりすぎずにもっと肩の力を抜いてというような↓メッセージが(私が勝手に読んで受け取ったものですが)ふわりと温かくて、ね。

「キルケゴールが書いてた」
 死に至る病というのは絶望のことだと。あの本は泣ける小説でもノンフィクションでもなく、哲学書だった。
「失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ」
P168

 失敗したって、笑っていいんだ。笑ったらいいんだ。そうわかったら、もう怖くなくなった。失敗も、そして、生きていくことも。
P169


何かが足りないということ、誰かが足りないということは、幾らでもこれからその穴を埋められる、これから出逢えるという、沢山の可能性(希望)に満ちているではないなと。
うん、不足は決してマイナス(駄目ないこと)ではないんだと、読んでいてそう思いました。

誰かが足りない誰かが足りない
(2011/10/19)
宮下 奈都

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