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2011(Sat)

「緋色の十字章(警察署長ブルーノ)」マーティン・ウォーカー著

読感/翻訳小説

「緋色の十字章(警察署長ブルーノ)」マーティン・ウォーカー著/

名物はフォアグラ、トリュフ、胡桃。風光明媚なフランスの小村で、長閑な村を揺るがす大事件が発生する。戦功十字章を授与された英雄である老人が、腹部を裂かれ、胸にナチスの鉤十字を刻まれて殺害されたのだ。村でただひとりの警官にして警察署長のブルーノは、平穏な村を取り戻すべく初めての殺人事件の捜査に挑む!英国のベテランジャーナリストが描く、清新な警察ミステリ。

↑本の内容紹介から。

フランスの田舎を舞台にしたミステリです。
とはいえ、書いているのはイギリス人(長年、ジャーナリストとして活躍していた方)なので、どういう風にフランス人を書くのか、ちょっと興味がありました。
(うん、やっぱりイギリス人とフランス人との間には、ライバル意識があるなーと思わせるエピソードにちょっと笑ったり)
やはり、美食に拘るフランスらしく、食べ物の描写に力が入ってる!
(↓はブルーノが通っているスポーツクラブで仲間たちと食材を持ち合うシーン)

 雨はあがりかけていたので今度はのんびり歩いて、いつものように試合後はクラブ・ハウスに戻った。シャワーを浴びてから、金曜恒例の昼食会用の食材を各自の車から取ってきた。ブルーノは家の鶏が産んだ卵、自家菜園でとれたハーブを持参した。春の初めならタンポポの小さな緑の蕾を摘むところだが、今はニンニクの新芽とイタリアンパセリ、それに自宅で収穫して冬からオイル漬けしておいたトリュフだ。ミシェルは自家製パテとリエットで、それは彼らがEUの規則に嬉々として逆らい、二月に集合して解体した豚でこしらえたものだ。ドゥーガルはパンとチーズとスコッチ・ウィスキー一本。スコッチはクラブ・ハウスのバーに集まってまず生ビールで喉を潤したあと、既に食前酒として味わっていた。ロロはビーフステーキ、グザヴィエはサラダと林檎(ボム)のタルト。バロンはワインで、試飲した結果その九八年のサンテミリオンは最高の飲みごろだと判断された。
P123より


この後、ブルーノはトリュフ入りの巨大オムレツを焼き上げる。
他にも、描写を読んでいるだけで、何だか美味しそうなものが色々と書かれていて、「自家製胡桃のワイン」とか、お酒は飲まないはずの私ですのに、思わずどんな味なんだろう?と興味を惹かれたり(笑)
ブルーノが警察署長として村に買った家を手入れする際は、村人たちが色々なものを持ち合い、また彼を手伝って廃屋に近いような家を直して、住み心地の良さそうな家に作りあげていく過程とか。
読んでいて、田舎暮らしっていいな!と、思わせる。
でも、ブルーノが初めて扱うことになった殺人事件(ようするに、村は通常は平和で朴訥した雰囲気)は歴史の暗部に触れるようなもので、なかなか重いと申しますか。
被害者となった老人は「アルジェリア戦争」で、フランスのために戦った人。故に、国からは裏切り者と見なされて、フランスに移住してきたわけですが。
移民が増えるフランスでは、その辺りにまた歪などが生じている。
歴史や現在の社会問題などを絡ませて進行していくお話は、重たいんですが、読み応えがありました。
ブルーノ自身は孤児で、軍に在籍しボスニアに出ていた過去があり、そのときに大切な人を失った経験があって。
だからこそ、彼を受け入れてくれた村に愛着を覚え、村を守りたいという想いが読んでいて伝わって来るところも良かったです。
続編も出る予定なそうなので、続きが楽しみ。

緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫)緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫)
(2011/11/11)
マーティン・ウォーカー

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(話はそれますが、アルジェリア戦争のことはフランスでは一時期、避けられていた歴史だったとか。それをシラク大統領が演説で「アルキ」に感謝を述べたと。前に読んだ「サラの鍵」で、フランス警察がユダヤ人の強制連行した歴史を明るみに出したのも、シラク大統領だったとかで。封印したい過去とちゃんと向き合おうした政治家なのかなと……。
翻訳ものの小説はフィクションだから、全てを鵜呑みにはできませんが(だから調べる)日本人が教えて貰うことのない歴史や諸外国の社会情勢を知ることの入口になるので、勉強になります。
小説を読んで、楽しみながら知識が増えるって、一石二鳥だよね!

サラの鍵(←映画公式サイト)」は映画も近く公開されるとのこと。
残念ながら私の行動範囲では、見に行けないのでDVDが出たら買おうかなと思っております。

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)
(2010/05)
タチアナ・ド ロネ

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