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2012(Wed)

「ニンジアンエ」古処誠二著

読感/国内小説

「ニンジアンエ」古処誠二著/

インパール作戦前年のビルマ。新聞記者の美濃部は日本軍の英印軍討伐に同行する。捜索が順調に進むほどに、美濃部の胸中にいくつもの疑問が生じていく。捕虜になったイギリス人は、なぜ不遜な態度を崩さないのか?ビルマ人の人質はどこに消えたのか?すべての謎が解けた時、美濃部は「戦地の真実」を突きつけられる。それぞれの正義と信念を圧倒的な筆力で浮き彫りにした傑作長編。

↑本の内容紹介から。

ビルマで宣撫班に同行取材する新聞記者の目を通して描く戦争小説です。
古処さんの戦争小説は、戦争の悲惨さや「戦争反対」と声高に叫ぶのではなく、淡々と当時のことを描かれるので、読んでいるこちらとしては色々と考えさせられます。
宣撫とは、地元住民との間を取り持ち、人心を安心させること。
戦争ってのは、決して敵味方の二分で決着付くわけではなく、そこに生きている住人たちの存在があったのなら……それらの人々の生活を脅かす戦争の愚かしさが、沁みてきます。
今回は主人公が兵士ではなく、民間人の新聞記者ということで、報道する側の心理が描かれれば……受け手側が賢くならなければ、いけないよな……と、昨今のマスコミの報道からもね。しみじみと思いました。

「ですが、主旨を絞り込むと事実を偽ることになります。不要なものを排除するといえば聞こえはいいですが、要不要の判断が作る側にあるのですから」
 その割り切りを新聞記者はどうつけているのかと奥山兵長は暗に問うていた。自分のさじ加減ひとつで人の感情を操作できる事実に、きっと恐れに近いものを覚えていた。
「これですべてだと思わないことです」
「どういう意味ですか」
「紙芝居だろうと新聞記事だろうと、受け取る側にとっては入口にすぎないということです。三歳の子供でも考える力はあります。奥山さんの紙芝居を入り口として戦況を大雑把に知ったあとは、子供たちも自分の目と耳で肉付けをするはずです。相手を信じることだと言えば大げさでしょうか」
(P254より)


捕虜にした英国人将校の「どちらが勝つか」との問いに「日本です」と揺るがない答えを返すところが、その後の歴史を知っているだけに何とも……。
勝つために、犠牲を無駄にしないためにと――。

あっけない戦闘は激しく、あっけない死は雄々しく書く必要がある。
(P288より)



「ニンジアンエ」はまだ日本が優勢な状況下でのお話ですが。
ビルマからの撤退の様子を描いた「メフェナーボウンのつどう道」と合わせて読むといいかもです。


ニンジアンエニンジアンエ
(2011/11/25)
古処 誠二

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メフェナーボウンのつどう道メフェナーボウンのつどう道
(2008/01)
古処 誠二

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