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2012(Sun)

「少年は残酷な弓を射る 上・下」ライオネル・シュライヴァー著

読感/翻訳小説

「少年は残酷な弓を射る 上」ライオネル・シュライヴァー著/

キャリアウーマンのエヴァは37歳で息子ケヴィンを授かった。手放しで喜ぶ夫に対し、なぜかわが子に愛情を感じられないエヴァ。その複雑な胸中を見透かすかのように、ケヴィンは執拗な反抗を操り返す。父親には子供らしい無邪気さを振りまく一方、母親にだけ見せる狡猾な微笑、多発する謎の事件…そんな息子に“邪悪”の萌芽を見てとるが、エヴァの必死の警告に誰も耳を貸さない。やがて美しい少年に成長したケヴィンは、16歳を迎える3日前、全米を震撼させる事件を起こす―。100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。女性作家の最高峰・英オレンジ賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

「少年は残酷な弓を射る 下」ライオネル・シュライヴァー著/

16歳の誕生日の3日前、“事件”は起こった。異常なまでに母に執着する息子と、息子を愛せない母。二人が迎える衝撃の結末とは―?100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。2005年英オレンジ賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

生まれてきた子供を愛せなかった母親のエヴァ。息子のケヴィンは16歳の誕生日を迎える三日前に「最悪(学校で生徒や教師を含めた多人数を射殺するという)」な事件を起こした――。
話は事件後、エヴァが夫への手紙という形でケヴィンの誕生(正確に言うと、生まれる以前)から過去を振り返って綴られています。
手紙という形で、実に一方的かつどこか愚痴めいたところがあったので、正直、こんな母親の下で育っていれば子供はやはり歪むのでは――?と、読み始めの所感で抱きました。
何しろ世界中を飛び回っている彼女は、留守中に夫を置いて行く罪悪感や万が一、夫が居なくなったときのための「コピー」として、子供を作ろうと思い立って。
でも、妊娠、出産と通してエヴァから感じるのは「こんなはずじゃなかった」的なもの。
……そんな「モノ」的な感覚で、接せられたら……人格否定も、いいところじゃないかと。
でも、読み進めていくうちに、成長するケヴィンからは狡猾さといったものが感じられて、ぞわぞわと。
(父親の前では、人懐っこい良い子を見せておき、その仮面を利用して教師を貶めたりといった)
「最悪」なことが起こったのだから「最悪」が待っていることがわかっていても、何とか止められないものかと、思いながらページを捲っていました。
もうね、エヴァが二人目の子供を産む辺りとか……。どう考えても、火に油を注ぐ行為にしか思えなくって(エヴァはシーリアを産んだことで、母親らしい子供への愛情を実感することが出来たけれど)
……そうして「最悪」は想像以上でした。
(ネタバレ反転→「手紙」という、一方的な構成の主旨がわかったといいますか……。
読み終わって思うのは母と息子の話として書かれているけれど、ケヴィンの憎悪の対象は父親だったのではないかな。
父親のフランクリンは、良い子としての一面しか、ケヴィンを見ていなかった気がします。そうして良い父親ぶっているフランクリンの愛情を軽蔑していのではないかと。

決して、楽しい読書経験ではなかったけれど、色々と考えさせられるお話でした。
考えさせられて、今も答えらしい答えを見つけ出せないでいるけれど。
子供の罪に親はどれぐらい責任があるのか?とか。
子供が罪を犯したとき、親は子供を守るべきなのか、否かとか。
(裁判の際に弁護士を雇うというエピソードで、思った)

こんな風に大事件を起こす子供は、そうそういない(いたら困る)わけですが。
でも、学校でのいじめ問題とかね。……子供が加害者になる場面は、あるわけで。
親となる人、親に限らず、身内が加害者になる(そんなことを考えるのは嫌ですが。果たして、自分が見ているそれがその人の全てかどうかは、わからないわけで)可能性を秘めている現実があれば、他人事とも言い切れないことに、ずっしりと重みを感じました。

たしかに子どもって、壊すのが大好きよね。ものを壊すのは、作るよりも簡単。あの「木曜日」の準備がどんなにたいへんでも、彼らと親しくなることに比べれば、それほど厄介じゃなかった。なにかを壊すことはある種の手抜きだと思うの。それでも、作ることと同じような満足感をもたらす。我壊す、ゆえに我あり、というわけ。それに、壊す行為には解放感もある。さらには、なにかを壊すことによって、それを自分のものにしたような気になることもできるわ。それにより身近に感じ、ほかの人には渡さなかったと感じることができる。~略~
(「少年は残酷な弓を射る・下」P39より)



映画化もされてます→「少年は残酷な弓を射る・映画公式サイト

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