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松原冬夜

Author:松原冬夜
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「フェリシアの旅」ウィリアム・トレバー著

「フェリシアの旅」ウィリアム・トレバー著/

男は車のミラーから彼女を凝視していた。映っていたのは、十七歳の少女フェリシア。連絡先も告げずに去ってしまった恋人を捜すためにアイルランドからイギリスにやってきた。何の手がかりもなく。車の男ヒルディッチは、町工場の食堂の責任者。だが彼には知られざる性癖があった。天才的な嗅覚で家出娘たちを捜し出し、巧妙に助けの手をのべ、感謝され、そして―。男は偶然の出会いを演出し、静かに、だが確実に、彼女を追いつめていく―。アイルランドの実力派による同名映画の原作。

↑本の内容紹介から。(一部、ネタバレっぽいところがあったので削除)

恋人が工場に勤めているという情報しか知らず、連絡先も知らない恋人の後を追って、アイルランドからイギリスへと渡って来たフェリシア。
捜す途中で出会ったのは、とある工場の社員食堂責任者であるヒルディッチ氏。
この二人の視点で大体、交互にお話は綴られています。
ヒルディッチ氏は大きな屋敷に住み、工場の皆にも慕われ、フェリシアにも親切な顔をして手を差し伸べてくるわけですが、これがね。
病の妻がフェリシアのことを心配してたとか、存在しない妻を入院させたり、死なせては葬式を出したりと(あくまで話の中でだけど)嘘八百並べ立てます。
過去にも何人かの家出少女にそうやって近づいていた。
そうして、フェリシアはというと、もう恋人に騙されていたというのが読み手には解かる感じで、とにかく世間知らず。
(そして、フェリシアは妊娠してしまった……)
フェリシアのお金を盗み、フェリシアの退路を断ち、そうしてフェリシアに子供をおろすようにと説得するヒルディッチ氏に、彼の思惑がわかっている読者としては「逃げて逃げて」とハラハラ。
語りが、過去や妄想が混沌としているので終盤辺りは狂気を感じさせて、ぞわぞわしました。
フェリシアの視点部分での、過去アイルランドの情景にひそむ哀愁がまた、個人的には好みでした。
サスペンス風でしたが、成長物語でもあったかな。
※結末に関して、ネタバレしていますので、注意寸前のところで、フェリシアは逃げ出して助かっていたんですが。行く先もない彼女は、もうホームレスとして堕ちるところまで。でも、自分の幼さというか愚かさを受け止めて、そして今を自ら選択しながら生きていくのだと彼女が学んだところに成長と逞しさを感じました

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