ブログランキング
この瞳に映るもの この瞳に映るもの

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

プロフィール

松原冬夜

Author:松原冬夜
「夜の夢」というサイトで小説などを書いています。
現在、ブライスさんに夢中。
写真は家のお人形さん

↓本館・夜の夢

↓ブライス写真ブログ

↓「彩」名義のお題サイト
88x31.jpg

Instagram

↓最近読んだ本など。
  




カテゴリー

応援してます!

  • 翻訳ミステリー大賞シンジケート
  • 被災地を応援しています
  • 覆面作家企画5

ブログ内検索

  • 2013
  • 08/04
  • Sun

「HHhH (プラハ、1942年)」ローラン・ビネ著

「HHhH (プラハ、1942年)」ローラン・ビネ著/

ユダヤ人大量虐殺の首謀者、金髪の野獣ハイドリヒ。彼を暗殺すべく、二人の青年はプラハに潜入した。ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞受賞作。

↑本の内容紹介から。

ナチスの金髪の野獣・ハイドリヒ暗殺事件を描く歴史小説です。
しかし、歴史だけを綴っていないところが、この本の面白いところ。
語り手は作者で、ある日手にした本について教師である父親から話を聞いて、いつかそれについて書きたいと思う。
自然、その出来事に関連する本を集めたり、それを題材にした映画などを観たりといった、この本を執筆するに至った作家の姿を悩みや想像(創造)丸ごと呑み込んで綴ったノンフィクション(ドキュメンタリー番組)のような、手触りです。
この独特のスタイルが興味深かったです。
普通、小説を書くに至って、作者の声は表に出るものではないし、正直、私は作品は作品として楽しみたい派なので、例え作者だとしても裏話は要らない(インタビューで聞かれたこと以外、喋らないでくれ)と思う性質なのですが。
ちょっと文章を書いている人間なら、読み手に言い訳したい部分など、出てくるわけで。
(こうして感想を書いていても、ここは「要らない」かなーと削ったり。どうしても舌っ足らずになってしまう部分を補足してしまいたくなる気持ちとか)
色々、わかる!
まあ、そんなところを全部、作者自身を語り手としてある意味、登場人物として組み込んだところにこの作者としての巧さを感じました。
っていうか、ここは「創作部分なんだ」とか、「この数行を書くために、これだけの資料を読んだんだよ!」とか。
本来、語られない苦労話を聞かされたら、こう、真剣に向き合わざるを得ないというか。
(けど、そういうものを読む前に読んでしまったら、絶対に読まなかったと思うんですが(苦笑)これは、もうそれ自体も本の一部になっていたので、あまり気になりませんでした)

僕はいつものようにオスカー・ワイルドのことを考える。思い出すのはいつも同じ話だ。「午前中ずっとかかって、ある文を直そうとして、結局はコンマひとつを取るにとどめた。午後、私はそれを戻した」(「HHhH」P152より)

そうして作者が書きだす歴史は(ハイドリヒがナチスの高官として上り詰める過程やチェコスロヴァキアを占領し、恐怖で支配するなど、暗殺事件だけではなくそこに至るまでの背景も描いており)、遠い過去のようで、だけど今現在もこの世から戦争がなくならない限り、決して無縁とは言えない出来事。
気がついたら、同じような局地に立たされていないことを願わずにはいられないと同時に、

「戦争か不名誉か、どちらかを選ばなければならないない羽目になって、諸君は不名誉を選んだ。そして得るものは戦争なのだ」(p94より)

ナチスが行ってきた非道が繰り返されないことを祈るばかり。
そうして、ナチスに抵抗するべく送り込まれた二人のパラシュート隊員がハイドリヒ暗殺したその後を追えば、
作家が感情移入すればするほど、終盤の彼らの運命に同じように夢を見たくなる。
(歴史を知っていれば、彼らがどうなるかわかっているわけだけど。小説の中では幾らでも、運命を書きかえられることができるだけに、史実に拘る作者の葛藤が、真に迫ってきました)


HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
(2013/06/28)
ローラン・ビネ

商品詳細を見る

top↑