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2013(Wed)

「ある奴隷少女に起こった出来事」ハリエット・アン・ジェイコブズ著

読感/その他

「ある奴隷少女に起こった出来事」ハリエット・アン・ジェイコブズ著/

1820年代のアメリカ、ノースカロライナ州。自分が奴隷とは知らず、幸せな幼年時代を送った美しい少女ハリエットは、優しい女主人の死去により、ある医師の奴隷となる。35歳年上のドクターに性的興味を抱かれ苦悩する少女は、とうとう前代未聞のある策略を思いつく。衝撃的すぎて歴史が封印した実在の少女の記録。150年の時を経て発見され、世界的ベストセラーになったノンフィクション。

↑本の内容紹介から。

奴隷制度が敷かれていた1820年代のアメリカで、好色な主に目をつけられた奴隷少女がそれから逃れる為に取った手段、逃亡、潜伏、それから北部に逃れてから自由を得るまでを綴ったノンフィクションです。
元々偽名で綴られていたので、フィクションと思われていた本書は、アメリカでも忘れられていた存在だったようですが、歴史学者が作者の実在を証明したことにより、ノンフィクションとして新たに光を与えられたようです(訳者あとがきから)
フィクションと思われる要因になった部分は、実際に読めばわかると思うんですが。
逃亡し北部に逃げたと思わせておいて、実は祖母の家(お祖母さんは主だった人によって、自由黒人となっていた)の屋根裏で七年間も、身動きすらままならない状況で潜伏していた――と。
また奴隷の女性に対して、主が手を出し(相手側の意に沿わぬ形が横行し)、子供を産ませるなどと言った、現代の常識からしても、また当時奴隷制度を認めていない北部の人間からしても、そんな人権を踏みにじった(奴隷制度自体が踏みにじっているわけですが)ことが行われているなど。
ハッキリ言って、想像を絶するほどの過酷さがあるから、にわかに信じ難かったと思います。
産まれた子供は母親に属するので、母親が奴隷である限り、また子供も奴隷であるとか。
子供でさえ、主の思惑ひとつで家族と引き離され、売られてしまう。
とにかく好色な主から逃れるべく、ハリエット(本書の中では、リンダ)はある策に出ます。
別の白人男性との間に、子供を作るという(この男性は、子供たちの権利を買うのですが、結局のところ自らの手で自由にしてあげることはなかった)
主人となった人が例え、良い人でも「所有する権利」を奴隷本人に帰すことをしない限り、本当の意味では自由にならないといった現実に、戦慄します。
そうして子供が出来たことで、主から愛想を尽かされ、別の人に売られるだろうと計算していたハリエットですが、主であるドクターはますますハリエットに執着していく。
奴隷女性たちが男性主たちの好色の犠牲になること、それがまた自分の娘に降りかかる災いとなる。
このままではいけないと、ハリエットは逃亡を企て、そして子供たちを含めて自由になるまでの過程は、ときに冒険小説のようでハラハラドキドキ(この辺りも、フィクションと思われた理由かと)
文章は読みやすいので、低学年の人も充分読めると思います。
十代の少女に対して、いい年をした男性が人格を否定するような罵詈雑言を始終口にしたりなどと言ったことは、権利があったとしても、人として行って良いことと悪いことがあり、そこでの行いにその人の品性が明かされるのだなと思いました。
言論の自由があったところで、言っていいことと悪いことがある、そんな当たり前のことが当たり前でなくなっている昨今の風潮に、他人の自由を踏みにじることに無自覚になっていないか、色々考えさせられました。

ある奴隷少女に起こった出来事ある奴隷少女に起こった出来事
(2013/03/29)
ハリエット・アン・ジェイコブズ

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余談。
お話の中で、ハリエットは主に従うくらいなら「プランテーションに行った方がまし」という選択をするのですが。
プランテーションでの過酷さなどは、「マーチ家の父」などが参考になるかと。
(この中では、まだマシな主が描かれていますが)
マーチ家の父 もうひとつの若草物語 (RHブックス・プラス)マーチ家の父 もうひとつの若草物語 (RHブックス・プラス)
(2012/07/11)
ジェラルディン ブルックス

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