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松原冬夜

Author:松原冬夜
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「若き日の哀しみ」ダニロ・キシュ著

「若き日の哀しみ」ダニロ・キシュ著/

第二次世界大戦中に少年時代を送った旧ユーゴスラビアの作家ダニロ・キシュ。ユダヤ人であった父親は強制収容所に送られ、帰らぬ人となった。この限りなく美しい自伝的連作短編集は、悲劇をアイロニーと叙情の力で優しく包み込む。犬とこの上なく悲しい別れをする少年アンディはあなた自身でもあるのです。

↑本の内容紹介から。

ユダヤ人の父親を強制収容所で亡くした作者の自伝的短編連作集。

「秋になって、風が吹きはじめると」「マロニエの通り」「遊び」「略奪(ポグロム)」「顔が赤くなる話」「セレナード、アンナのために」「野原、秋」「婚約者」「陽の当たる城」「野原」「虱とり」「きのこの話」「猫」「梨」「馬」「遠くから来た男」「ビロードのアルバムから」「少年と犬」「風神の竪琴」

と、220ページほどの本の中に↑が収録されているので、一編一編はそれほど長くありません。
詩のような最初の掌編「秋になって、風が吹きはじめると」から始まり、誰かに話しかける語りで過去を回想する「マロニエの通り」と。
読み始めた最初の方は、一つ一つの話に直接的な繋がりが見えず、バラバラのように感じるのですが。
少しずつ、中心となる少年の名前、家族構成などといったものが見えてきます。
ユダヤ人の父親が強制収容所に連れて行かれ、そのまま帰ってこなかったこと。
それ故に陥った貧しさ。その貧しさを恥ずかしく感じる気持ちと言ったものが。
少年時代を語るなかで、戦争など直接的には書かれていない。
だけど、貧しさや絶望、空想への逃避、喪失、別れの哀しみがじわりと、沁みるように伝わってきました。
また、情景描写が眼前に浮かび上がるかのようで、素晴らしかったです。
↓サーカスの市が去った後の秋の野原を描いた「野原、秋」の一部。
 この踏みならされた場所を囲むように、草が生い茂っている。香り高い草には、青や黄色の遅咲きの野の花、はじけてしまったホタルブクロ、春先はもう色あせてはいるがまだ衰えぬ力の触手でかよわい花や青緑の草を窒息させながら、勝ち誇ったように繁茂する雑草が混じっている。これは、草の最後の勢い、根の最後のひと飲みだ。オオバコは、細かい実で飾られた黒みを帯びた茎を伸ばし、葉は縁が黒ずんで縮みはじめ、葉先は鋭い獣の爪となって、たがいに突き刺し合っている。ここには目に見えない戦が続けられ、雑草の生い茂り勝ち誇った剣とその長い触手が突き出していて、花たちは、貪欲な草の飽くことを知らない攻撃にあいながらも最後の力をふりしぼって生え、なにかしらの強すぎる香りを放っているのだ。寝苦しいほど混ざりあった匂いと、戸惑うほど絡み合った色彩に酔いしれ浮かされて、蜜蜂や虫は、香りに満たされた戦場で、愚かしい羽音をたてる、金蠅や雀蜂、ミツバチモドキや蝶々とぶつかりあいながら。身を膨らませ重そうなバッタが一匹、枯れていく葉の色をして、かすれた音を立てて野原を跳び、そしてふとってのろまな姿そのまま、もつれ合う草の茂みに落ちた。熟れた、野生の木の実のように。
 野原はそんな様子だ、市日の終わったあとの人気のない秋の野原は……(「若き日の哀しみ」P64)


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(2013/09/28)
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