ブログランキング
この瞳に映るもの この瞳に映るもの

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

プロフィール

松原冬夜

Author:松原冬夜
「夜の夢」というサイトで小説などを書いています。
現在、ブライスさんに夢中。
写真は家のお人形さん
・マリア
(レッドデリシャス)
・アリス
(ユニバーシティオブラブ)
・ローズ
(モニークマニフィーク)
・ティナ
(セイディスプリンクル)
・リディ
(キスミートゥルー)
・ニーナ
(ミシャティビャーリュブリュー)
・ユリア
(ローシェックモルセー)
・カレン
(シャルロットデフルール)
・アメリア
(レジーナ・アーウェン)
・イザベラ
(ビアンカパール)
・ジュリア
(スコッティマム)
・エステル
(サリー・サルマガンディ)
*べべ
(メラニーユビークガール)
・メアリー
(ダークラビットホール)
・ソフィア
(ミンティーマジック)
・メロディ
(プレイフルレインドロップス)
・ルーシー
(デヴィデラクール)
・グリシーヌ
(アドアーズ・アナ)
・クラリッサ
(ホームスウィートホーム)

↓本館・夜の夢

↓ブライス写真ブログ

↓「彩」名義のお題サイト
88x31.jpg

Instagram

↓最近読んだ本など。
  




カテゴリー

応援してます!

  • 翻訳ミステリー大賞シンジケート
  • 被災地を応援しています
  • 覆面作家企画5

ブログ内検索

  • 2014
  • 07/06
  • Sun

「こちらあみ子」今村夏子著

「こちらあみ子」今村夏子著/

あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。

↑本の内容紹介から。

「こちらあみ子」「ピクニック」チズさん」の三編収録の短編集。
どれも無垢というか、一途な人を描いていて……それ故に、反対側にいる人間がある意味、丸裸にされてしまうかのような。そこに映し出されるのはときに醜悪な欺瞞であったりするので、読んだ後は何とも言えない複雑な感情が残ったりする。
でも、この本は多くの人が読んだ方がいいと思うような、そんな作品集でした。

表題作の「こちらあみ子」は、転校する前の学校で大好きなのり君に殴られ、前歯を三本失っている――という前情報から、何故、そうなってしまったのかと、過去に遡って語られます。
お話はあみ子に寄り添った視点で綴られ、あみ子の理解出来る範囲で書かれている。
だから最初の方はあみ子がちょっと変わっていて、お母さんはそんなあみ子によそよそしい。何でこんなにぎこちないのだろう?と読み進めていけば、あみ子は(恐らく、発達障害)で、お母さんは再婚による継母ということがわかってきます。
そんなぎこちない関係もお母さんの死産という悲劇を越えて、一時期は近づいて行くのですが。
あみ子の、周りを理解できない故の無邪気な言動が、あまりにも残酷にお母さんの心を傷つけてしまう……。それをきっかけに仲が良かった家族がバラバラになっていくのが、悲しい。
それをあみ子がわかっていないというのがまた、辛い……(家庭崩壊のことだけでなく、いじめやのり君に嫌われているということも……)
そしてあみ子の言動はそんな家族だけに留まらず、大好きなのり君にも及べば、あみ子が一途にのり君を慕えば慕うほどその負荷がのり君の中であみ子は憎しみの対象になってしまうという……。

「わからんじゃろう」「それって」「あみ子にはわからんよ」
~略~どうして、弟と思っていたのだろう。妹だったのだ。誰も教えてくれなかった。それとも教えて貰ったけれど忘れていたのだろうか。

「教えてほしい」
 坊主頭はあみ子から目をそらさなかった。少しの沈黙のあと、ようやく「そりゃ」と口を開いた。そして固く引き締まったままの顔で、こう続けた。「そりゃ、おれだけのひみつじゃ」
 引き締まっているのに目だけ泳いだ。だからあみ子は言葉をさがした。その目に向かってなんでもよかった。やさしくしたいと強く思った。強く思うと悲しくなった。そして言葉は見つからなかった。あみ子はなにも言えなかった。


あみ子のそれは「わからない」ということで、周囲があみ子に理解させるのを放棄してしまったのが原因だったのではないか……。答えなんてどこにもないし、当事者でもないものの憶測では計り知れない苦労もあるのだろうけれど。
そんな虚しい考えが読後も居残ってしまう。
強い言葉も、強烈な出来事も、エンタメ作品に比べればそれほどではないのだけれど。深く突き刺さる。
この表題作だけでも、多くの人に薦めたい。そんなお話でした。

こちらあみ子 (ちくま文庫)こちらあみ子 (ちくま文庫)
(2014/06/10)
今村 夏子

商品詳細を見る

top↑