17

January February March April May June July August September October November December
2014(Sun)

「幻獣の書―パラディスの秘録」タニス・リー著

読感/翻訳小説

「幻獣の書―パラディスの秘録」タニス・リー著/

舞台はヨーロッパのとある幻想の都パラディス。地方から学問を修めるために上京した青年ラウーランは、凋落貴族デュスカレの屋敷に下宿する。まもなく彼はこの不気味な屋敷で美貌の幽霊に出遭う。彼女の名はエリーズ・デュスカレ。誰もがその名を忌み嫌う。やがてラウーランを巻き込む奇怪な出来事の数々、その謎は遠くローマ時代にまで遡り、一族の呪われた運命が解き明かされてゆく…。幻夢的な作風で知られる著者が描く、美しくも禍々しい怪奇物語。

↑本の内容紹介から。

昔、子供の頃読んだことがあるというのだけは覚えていましたが、内容はうっすらとしか残っておらず。
この度、新刊が出ると言うので、「堕ちたる者の書」と合わせて再読。(「堕ちたる者の書」もまた後日、感想を書きたいと)
シリーズ物ですけれど、舞台となるパル・ディスという架空都市(ヨーロッパのどこか)を舞台にしているんですが、時代など色々なので、単品として楽しんでも大丈夫かと(こちらの二作は古書でしか手に入りませんし)

と、話を戻して。
お話は、勉学のためパラディスにやって来た青年ラウーランが没落した貴族屋敷に下宿を始めるところから、始まります。
そこで彼はある人物の存在を感知したものの、屋敷を管理する者たちは自分たち以外には誰も住んでいないという。
では、幽霊なのか――と、ラウーランは好奇心に駆られ、幽霊を探しだします。
そして、幽霊だと思われていた女性エリーズが語りだせば。
この本には、「緑の書」と「紫の書」が入っており、「緑の書」はラウーラン→エリーズ→ユダヤ人ハニナ→エリーズ→ラウーランと、章ごとに視点が変わり、過去へ遡りまた戻って来るという構成。
幽霊の正体から貴族一族にまつわる呪い、その発端へと過去へと遡り、段々と謎めいていたことが繋がって来るのが面白い。
そうしてエリーズが語る過去はデュスカレ家の花嫁として嫁ぎ、そこで引き起こした悲劇。
その悲劇の根源を描いているのが「紫の書」で、そこでまた綴られる悲劇は既に未来の「緑の書」で知っているだけに、なす術もなく繰り返される悪夢を見るかのよう……。
そうして再び「緑の書」に戻れば、またラウーランの身に――と。
もうこれは「悲劇」しかないだろうと思っていたところ以外にも「ハッピーエンド」だったのが、個人的は巧いなと。
お話の構成もですが、色彩表現豊かな文章がとっても、とっても好みでした!
大人になって、文章を味わうということを覚えた現在、再読して良かったです!

幻獣の書―パラディスの秘録 (角川ホラー文庫)幻獣の書―パラディスの秘録 (角川ホラー文庫)
(1994/04)
タニス リー

商品詳細を見る


表紙が出ないので、前に撮った写真を。
興味ある人は図書館か古本屋などで探してみて(もしかしたら、新刊本屋でも残っているかも知れませんが)


Edit