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2015(Sun)

「無名亭の夜」宮下遼著

読感/国内小説

「無名亭の夜」宮下遼著/

極東の島国・日本。場末の「店」で「彼」は、店主の従兄弟が語る不思議な物語に耳を傾ける。それは、遙か遠いオスマン帝国の時代、皇帝の近衛兵となった「少年」が、詩に魅せられ、当代一の語り手へと登りつめるめくるめく物語だった──。
時空を往還しながら、物語を形作る七つの神秘に迫る、七夜の旅。壮大な世界観と文学的な仕掛けに満ちた野心作!

↑本の内容紹介から。

オルハン・パムクの翻訳家として知られる方の初の小説です。訳文が好みなので、小説のほうも楽しみにしていました。
(やっぱり内容も勿論だけど、文章も好みに合うほうがいい)
お話は極東の島国・日本(←ある人の視点からはこういう表現になる)とある「店」に、客である「彼」が二十年という年月をかけて、通い続けます。
「彼」が通うその目的は、店主の従弟である語り部が語るお話。
それは遥か昔のオスマン帝国で「詩」に魅せられた少年の物語――と。
小説は幾人もの語り手によって、遥か昔のオスマン帝国とそして現代の日本を行きつ戻りつな感じで進んでいきます。
無名亭という、小説のタイトルからある通り、メインとなる登場人物は「彼」「従弟」「少年」などと、
名前は出てこない(ある者の名は後々、ある答えとして語られる)ので、まあ、それは語り部の作り話かそれとも?と輪郭は曖昧なれど。
読み進めていくと、ちょこちょこと見え隠れする伏線で、語り部や店主の正体にニヤリ。
また少年の物語も面白ければ、「彼」のある種の成長物語としても読めたりと、色々面白かったです。

そんな表題作と一緒に収録されているのは、高級紙に写字されていた妙な詩編の意味するところは?――「ハルキファキル」。
「ハルキファキル」も現代と、紙に記されていた昔の帝国と行きつ戻りつ。
ちょっとばかり「無名亭の夜」と関連ある部分もありますが。
荷運びの兄と詩人の弟の、兄弟物語として楽しめました。仲が悪そうで、良さそうという関係は好きだな!
どちらのお話も詩が題材としてあるので、文章は平易だけど描写は表現豊かで、良かったです。
「語り」で構成されるお話が好きな人、「物語」が好きな人、そして「物語」を書く人におススメ!


「神よ、記憶力なき異教徒に慈悲を垂れたまえ……。物語の身体は七つのものから出来ておると、教えられたであろうが。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、そして知性。ではもう一つ、何が欠けていると思う?」
(「無名亭の夜」P47より)


無名亭の夜
宮下 遼
講談社 ( 2015-08-26 )
ISBN: 9784062195164

わたしの名は赤〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)

わたしの名は赤〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)




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